セダンの快適性やステータス性を備えつつ、高い利便性や優れた積載性を持ち合わせるステーションワゴン。北米や欧州では相変わらず一定の人気を獲得しているが、日本国内ではほぼ壊滅状態となっている。そんな中、今夏にはクラウンエステートが登場予定。これによってステーションワゴン人気が再燃する可能性はあるのか? ここでは、一時代を築いたステーションワゴンを紹介しよう。

文/木内一行、写真/トヨタ、スバル、日産、ホンダ

■高級感と機能性の両立はさすが「クラウンステーションワゴン」(8代目)

「パーソナルマインドをもつ最高級ステーションワゴン」をコンセプトに、クラウンのもつ高級感や上質感を受け継いだ外観。写真は1991年10月に改良が施されたロイヤルサルーンで、より重厚感のあるフロントマスクとなった

 大きな転換を図った現行クラウンのモデルチェンジは賛否両論こそあるものの、注目度抜群だったことは間違いない。それだけに、17年ぶりに復活するエステートも話題となること必至だ。

 ステーションワゴンやエステートは歴代モデルでも設定されていたが、なかでも8代目ワゴンは幅広いユーザーから支持された、印象深いモデルといえるだろう。

 1987年にデビューした8代目クラウンは、「世界が認めるトップレベルの高級車」を目指して開発され、バブル景気も手伝って大ヒットを記録。

 ステーションワゴンは、セダンと同一のフロントマスクやスペース効率を追求した2段ハイルーフ、大型リアコンビランプなどを採用し、より乗用車的なスタイリングを実現した。

 そして、エンジンも2L直6DOHCにスーパーチャージャーを装着した1G-GZを搭載し、高級車にふさわしい動力性能を手に入れたのである。

 1991年にはハードトップ系がフルモデルチェンジしたが、ステーションワゴンは大幅な改良を施して継続販売。外観はより洗練されたデザインとなり、大型バンパー装着の3ナンバー仕様も登場。オットマン機能付きのニューラウンジシートが採用され、エンジンも最上級グレードには2.5Lの1JZを搭載するなどのアップデートが施された。

 このような改良を施して1999年まで販売されたが、高級志向のユーザーから支持されるとともに、ローライダー系などのカスタムユーザーからの人気も高かった異色なモデルでもあったのだ。

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■積んでヨシ走ってヨシ! の新世代上級ワゴン「ステージア」(初代)

1996年に登場した初代ステージア。R33スカイラインと基本コンポーネンツを共有している

 セドリック/グロリアが担っていた上級ステーションワゴンのポジションに、新たに送り込まれたのがステージアだ。

「プレステージ・ツーリングワゴン」のコンセプトで開発されたステージアは、ワゴンボディならではの高い機能性と、セダンの快適でスポーティな走りを両立した、これまでの国産車にはない新しいツーリングワゴンを創造。

 車格感と存在感を強調したエクステリアは、スポーティかつ高級感あふれるスタイリングで、独創的なデザインのヘッドライトを採用したフロントマスクや伸びやかなロングルーフや特徴的だ。

 室内の作り込みも上級のツーリングワゴンらしさ満点で、ゆとりある居住空間とともに、広く使いやすいラゲッジスペースを実現している。

 そして、ステージアのセールスポイントのひとつが走りのよさ。これを実現したのがR33スカイライン/C34ローレルと共有のシャシーで、リアマルチリンクサスペンションや高剛性ボディ、直6の2.5Lターボエンジンなどにより、高性能セダンに匹敵する走りを手に入れたのである。

 さらに、オーテックジャパンが手がけた「260RS」も追って登場。これはR33GT-Rのパワートレーンを移植した最強バージョンで、ワゴン版GT-Rとして大きな反響を呼んだ。

 幅広いユーザーから支持されたものの、販売期間約5年と決してロングセラーではなかった初代ステージア。しかし、ワゴン専用モデルとして一時代を築いたことは間違いない。 

■北米で生まれ育ったワゴン界のカリスマ「アコードワゴン」(初代)

前半分はセダンと共通だが、後ろ半分は当然ながらワゴン専用設計。安全性に配慮し、運転席用SRSエアバッグシステムやサイドドアビームなども採用する。また、北米生まれらしくタイヤも新開発のオールウェザータイプが装着される

 4代目アコードのデビューから約1年半遅れで登場したアコードワゴン。

 シリーズ初のワゴンモデルということに加え、企画立案からデザインや設計・開発を「ホンダR&Dノースアメリカ」(HRA)で行い、生産を「ホンダ・オブ・アメリカ・マニファクチャリング」(HAM)が担当した、生まれも育ちも北米という異色のモデルなのだ。

 エクステリアは、Bピラー以前はセダンと共通だが、伸びやかなルーフラインはワゴンボディならではで、バンパー上部から大きく開くテールゲートなど実用性も考慮したもの。軽度の衝撃を緩和する5マイルバンパーが、北米生まれを感じさせる。

 また、エンジンは北米のアコードセダンに搭載して高評価を得た2.2L直4ユニットを搭載。合わせて、厚型ドアモールを装備して3ナンバーサイズとしていることも特徴のひとつだ。

 インテリアも基本的にはセダンと同じだが、シート表皮には上質な風合いを醸し出す心地よいモケット地を採用して差別化。さらに、左右分割式のリアシートを倒せば、圧倒的な広さのラゲッジスペースに早変わりする。

 国内仕様のセダンや既存のワゴン車では得られないアメリカンテイストを武器に、アコードワゴンは一躍ヒットモデルに成長。ワゴンというカテゴリーに新しい風を吹き込んだ一台だった。

■ステーションワゴン人気を引き上げた立役者「レガシィツーリングワゴン」(初代)

初代レガシィツーリングワゴン

 ワゴンがまだ商用車の延長線上と考えられていた1980年代初頭から、レオーネにステーションワゴンを設定していたスバル。

 1989年には、世界をターゲットにしたグローバルモデルとしてニューカマーのレガシィをリリースし、セダンのほかにツーリングワゴン(ステーションワゴン)もラインナップした。

 そのツーリングワゴンは、小型上級車としての格調を保ちながら、豊かでのびのびとしたスタイリングを構築。2段ルーフや3次曲面のウィンドウで、ワゴン感覚をいっそう強調させている。

 また、セダンよりもリアのオーバーハングを90mm延長し、広くて使いやすいラゲッジスペースを確保したのだ。

 そして、レガシィのなかで最も注目されたのがGTの存在。これは、200psを発揮する2L水平対向4気筒ターボエンジンにフルタイムAWDを組み合わせたハイパフォーマンスグレードで、それまでのワゴンのイメージを覆すほどの圧倒的な走りを披露した。

 このGTの登場により「高速ツーリングワゴン」というひとつのキーワードが確立され、レガシィは大人気車種の仲間入りを果たしたのである。

 その後のレガシィの快進撃はご存じのとおりで、2代目以降もツーリングワゴンの勢いは衰え知らず。ワゴンブームを牽引し、ワゴン人気を引き上げた立役者なのだ。

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