大型連休中だからこそ起こった東京でのバスあるある事件を紹介する。知らないことに起因するトラブルだが、思いのほか東京でバスが使われている裏返しでもある。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
(すべての写真はイメージで本文とは関係ありません)
■前乗りはわかるけど…
東京23区内の路線バスは基本的に均一運賃だ。都営が210円のほかは多くが220円の均一なのでどこまで乗っても同じ運賃である。いずれにせよ前乗り後ろ降りの運賃前払い方式だ。地方から東京に遊びに来た旅行者はこれまで、JRや地下鉄、あるいは私鉄といった鉄道は利用しないとどこにも行けないし、早くて安くて便利な交通機関なので第一選択肢として利用され続けてきた。
ところが、最近は旅行者が路線バスを利用する光景をよく目にする。もちろんバスでないと行きにくい場所もあるにはあるが、メジャーな観光地は概ね鉄道で事足りることから、これも時代の変化なのかと感じることもある。
乗車方法を知らなくても、バス停に並んでいる人に付いていけば前乗り制度そのものは大した障害ではない。前の乗客が運賃を現金やICカードで支払っているのを見れば、それに続けばよい。
■これは事件です!
記者が見聞きした2つの事例を紹介するが、いずれも外国人ではなく日本人の話である。まずは不幸なことにバス停に並んでいる人がおらず、バスの前ドアが開いて焦ってしまったお客さんの事例だ。地方は対距離制運賃であることが多いので、整理券を取り降車時に運賃を支払う。よって現金支払いの時は小銭の用意は乗車してからでよい。
前払いであることに焦った乗客は、あわてて手持ちのICカードの名称を言って支払いができるかどうかを運転士に聞いたようだった。ところが地方発行のICカードは決してメジャーな存在とは言えず、運転士も鉄道マニアでもない限りいちいちすべてのカードの名称なんて覚えていない。
運転士が答えに窮している間に乗客は現金で支払って事なきを得たようだった。現在のICカード乗車券はたいていが全国で使用できるので相互利用のマークで確認しておくといいだろう。
■両替投入口が……ない!
次の事例は記者が連休中の体験談を聞いた話だ。おおよそ地方の旅行者が使用することはないだろうと思われる路線での話だ。前乗り運賃先払いも運賃額まで知っているので、あわてず騒がず前ドアから乗車して運賃箱の前に立った。
両替をしようとしたところ硬貨投入口がないことに気が付き、運転士に尋ねた。運転士は運賃投入箱を指さして入れてくれとゼスチャー。カンの良い方はもうお気づきだろうが、これは双方の認識違いから起こった不幸な事件だ。
■両替が必要ないのはレアケース
おそらく運転士は「運賃箱にお金を投入すればお釣りが出るのだからさっさと入れてくれ!」という認識だったのだろう。一方で乗客は「そうはいっても運賃箱にお金を入れてしまったら過払いになってしまうではないか!」と思ったという。
実は「運賃箱からお釣りが出る」というのはレアなケースなのだ。一般的な運賃箱は千円紙幣以外の硬貨は両替投入口に入れると両替口から小銭が出てくる。その中から運賃をお釣りなく支払うのが全国的な常識だ。
むしろお釣りが自動的に出てくる方がレアなケースなのだ。23区内で仕事をしている運転士の「お釣りが出る」常識と、乗客の「両替しなければ運賃が支払えない」異なる常識とが交錯した笑えない事件だった。
■異なる常識が交錯!
乗客からすると「後ろから乗車する人が迫っているのに何をやってんだ!早く両替の仕方を教えてくれ!」との主張だ。運転士は「300円でも500円でもお金を入れてお釣りを取ってさっさと乗ってくれ!」と思ったに違いない。結果的に運転士は「お釣りが出る」という言葉を発しないまま投入口に入れるように促し、お釣りが出てやっと事の次第に気が付いたという顛末だった。
異なる常識とは恐ろしいもので、運転士にとってはそれが常識でまさか両替をする運賃箱があるなんて思いもしなかったのだろう。一方的に責めるわけにもいかないが、乗客からすれば「釣りが出るなら出るといってくれ」と不親切に思っただろう。
乗車券を購入して改札口を通り、降車後はその逆という全国一律の鉄道乗車方式が通用しない路線バス、それも便利な高機能運賃箱を搭載する東京路線バスあるある大事件だった。
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