スズキのベーシック軽であるアルト。現在は9代目モデルが販売中となっており、日常のアシから営業車まで幅広いユーザーに支持されている。そんなアルトの初代モデルは1979年に登場し、新車でありながら47万円という衝撃的な価格で一大センセーションを巻き起こした。そんな偉大な初代アルトについて、今一度振り返ってみたい。

文:小鮒康一/写真:スズキ

■税制の隙を突いた「軽ボンネットバン」として登場した初代アルト

初代アルトは、安価な日常のアシを求めていたユーザーから圧倒的な支持を集めて人気車種になった

 現在は乗用車として販売されているアルトであるが、初代モデルは4ナンバー登録の商用車として販売されていた。

 当時、乗用車には高い物品税が課せられており、3ナンバーの乗用車で23%、5ナンバーで18.5%、そして軽乗用車でも15.5%という高い税率となっていた一方で、商用車は業務に供する車両ということで物品税が非課税となっていたのだ。

 そこに目を付けたスズキは、アルトをフロントシート優先の軽ボンネットバンとしてリリースし、高い物品税を回避するという手段に出たのである。

 そもそも当時の軽自動車は今よりもサイズが小さく、リアシートを日常的に使用するケースはそこまで多くなかったため、4ナンバーでも不満を覚えるユーザーは少なかったという側面もあるだろう。

 結果、アルトはもともと47万円という低価格に加えて税制面でも有利となり、安価な日常のアシを求めていたユーザーから圧倒的な支持を集めて人気車種になったというワケなのだ。

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■常に庶民の味方であり続けている

現行アルトの税抜100万円を切る車両本体価格というのは、初代の意思を受け継いでいると言えるかもしれない

 ちなみにこの軽ボンネットバンというジャンルは当然他メーカーも後追いし、ダイハツ ミラ・クオーレやスバル レックス コンビなど、同様のコンセプトのモデルが多く生まれた。

 その結果、国は軽ボンネットバンにも物品税をかけるようになったのだが、軽トラックなどの2シーターは引き続き非課税だったため、アルトにも2シーター仕様を追加するなど、いたちごっこが続くことにもなったという逸話があるほど。

 もちろんアルトは税制面だけでなく、47万円という低価格で販売するためにさまざまなコストカットを行っており、ラジオやシガーソケットはもちろんオプションとし、ウインドウウォッシャーもモーターを必要としない手動ポンプ式。

 極めつけはボンネットオープナーのワイヤーを省略するために、ボンネットを開けるときはボンネットに備わっているスズキのエンブレムを押すようになっていたほどだったのである。

 このように、さまざまな手法でユーザーへの負担を減らそうとしていた初代アルト。さすがに現行型は衝突被害軽減ブレーキなどの義務化などもあり、初代アルトのように簡素な仕様にはなっていないが、それでも税抜100万円を切る車両本体価格というのは、初代の意思を受け継いでいると言えるかもしれない。

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