コンパクトミニバンの両雄と言えば、シエンタとフリード。それぞれに使い勝手の良さがあり、優劣のつけにくい両者だが、今回は乳児期の子供を抱える新米パパ・ママが使った場合、どちらを選ぶべきかを考えてみた。
文:佐々木 亘/写真:HONDA、TOYOTA
■小さくて小回りが利くのは日本の道路の正義になる
フリードがモデル末期ということもあり、2024年に入ってからの販売台数はシエンタが大幅リードだ。2月末の時点で、シエンタが約1万8000台、フリードは約1万2000台(フリード+を含む)となった。シエンタは昨年11月から、月間の販売台数ランキングで4か月連続1位にも輝く。
シエンタが人気の理由はいくつもあるが、まず取り上げたいのはクルマのサイズ感と取り回しのしやすさだ。
シエンタのボディ全長は4,260mm、対するフリードは5mm長い4,265mmとなる。フリード+はシエンタよりも35mm長い4,295mmだ。最小回転半径は、シエンタが5mに対してフリードは5.2m。ほんの少しの違いだが、細い路地での取り回しや駐車の際にはシエンタの方が扱いやすい。
フリードが決して悪いわけではないが、取り回しの面ではシエンタに軍配。コンパクトミニバンを探す上で、やはり運転のしやすさは外せないというなら、現状はシエンタを選ぶ方が吉となる。
■今も未来も考えてシートはやっぱりベンチでしょ!
シエンタとフリード、両者で最も大きく違うのは、基準となる乗車定員数である。
シエンタは5人・7人を選ぶ形になるが、2列目シートはどちらもベンチシートだ。クルマづくりの基準はベンチシートであり、ベンチシートありきで作り込まれている。対するフリードは6人・7人を選択する形であり、4WDは6人乗りのみ。つまりキャプテンシートの6人乗りを基準にしてクルマが設計されているのだ。
2列目にチャイルドシートを設置して、さらにベビーのお世話を車内で行うとなると、キャプテンシートよりもベンチシートが使いやすい。
特に両親と乳幼児の3人で使う場合は、助手席が空いて、チャイルドシートの隣にパパ・ママのどちらかが座ることになるだろう。この時も、座席が離れたキャプテンシートよりもベンチシートの方が何かと便利になる。
フリードは圧倒的に6人乗りで使うことを前提に作り込まれたクルマだ。ベンチシートにすると、フリードの良さが減ってしまう。ならば最初からベンチシート前提のフリード+という手もあるが、応急用に3列目は残しておきたい。
例えば、祖父母も含めた3世代で、近くのお食事処へ出かけるとなった時、5人乗りのクルマにチャイルドシートを積んだ状態では、大人4名+乳児の乗車は厳しい。補助席でもなんでも、3列目が必要となるだろう。さもなければ、クルマ2台で出かけなければならない。
子供の乳幼児期、実家へお世話になる機会が多くなると、このシチュエーションは結構な頻度で発生するだろう。
この時にクルマ1台で出かけられる、3列シートコンパクトミニバンがあるのはスマートだ。ベンチシート基準で3列シートとなると、比べるまでもなくシエンタ一択になってくる。
今後、子供が二人・三人と増えても、ベンチシートなら子供と横並びで3人まで乗れるから、5人家族でも2列目までで乗り切れるというのも魅力の一つ。長く使うことを考えても、キャプテンシートのフリードよりも、ベンチシートのシエンタの方が良いというわけ。
■新型フリードの内容次第でパワーバランスは変わるかも
おそらく次世代もフリードは6人乗りを基準にして、クルマづくりを進めてくると思うが、フリードがベンチシート需要に対して一定の進化を見せれば、現在のパワーバランスが大きく変わってくる可能性もある。
また、キャプテンシートのフリードは3列目へのアクセスが抜群に良いので、子供が幼児期から就学児のあたりだと、使いやすさがシエンタの比ではないだろう。3列目を片方出して、変則的な5人乗りなど、シートアレンジが多彩なので、子供が大きくなってきたらフリードをおススメしたい。
今回は、乳児一人の核家族前提で話を進めたが、ライフステージによってクルマのベストチョイスは変わってくるはずだ。実際に触って乗って、今の使い方には何が良いのか吟味できると、クルマ選びがより楽しく、有意義な時間に変わっていく。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。