スウェーデンのボルボ・トラックスは、トラック用燃料としてバイオディーゼル100%の「B100」燃料が利用可能になったと発表した。
バイオ燃料はエネルギーの製造段階を含めたトータルでのCO2削減効果が高いとされる。トラックがB100燃料に対応したことで、脱炭素の手段も拡大しそうだ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Volvo Trucks
CO2を70%削減する「バイオディーゼル」トラックを拡大
ボルボ・トラックスは2024年5月16日、同社製のトラックが「B100」バイオディーゼル燃料で駆動できるようになったと発表した。輸送によるCO2排出量を今すぐに減らしたい顧客に、新たな再生可能燃料という選択肢を提供する。
バイオディーゼルを利用可能なモデルを拡大するのは、トラックによる環境への影響を減らすという同社の戦略に沿った動きで、ボルボ・トラックスが提供している再生可能燃料オプションがさらに広がった。
新たにB100燃料が利用可能となるトラックは、ボルボ「FL」「FE」「FM」「FMX」「FH」「FH16」の一部モデルとなる。
バイオマス(生物資源)から製造するディーゼル燃料の「バイオディーゼル」は、B5(軽油に5%混合)やB20(同20%)など軽油に混合してして用いるが、B100は軽油と混合しない100%バイオ燃料。狭義のバイオディーゼルは、一般的にエンジン側での対応が必要となるため、認定された車両以外では利用できない。
いっぽうHVOなど従来のディーゼルエンジンでそのまま燃焼できる燃料を「ドロップイン燃料」と言い、ドロップイン可能な100%バイオ燃料を「リニューアブルディーゼル」と呼び区別することがある。
バイオ燃料は、いわゆる「ウェル・トゥ・ホイール」でのCO2削減効果が高いことが知られており、原材となるバイオマスの種類にもよるが、CO2排出量はディーゼル車より30%から70%少なくなる。
(「ウェル・トゥ・ホイール」(WTW)はエネルギーの製造段階を含む全体的な排出量を、「タンク・トゥ・ホイール」(TTW)は車両自体からの排出を指している。バッテリーEVはTTWでは排出ゼロだが、WTWでの排出が多く、逆にバイオ燃料は局所的にCO2を排出するものの、WTWでの排出は非常に少ない)
バイオディーゼルの「ファクト」
ボルボの中・大型トラックレンジは現在、ディーゼル、バイオディーゼル、HVO(水素化植物油)、CNG(圧縮天然ガス)、LNG(液化天然ガス)、バイオCNG、バイオLNG、そして電気という豊富なパワートレーンを用意している。
ボルボ・トラックスは、バッテリーEVと燃料電池自動車に加えて再生可能燃料を燃焼する内燃エンジンを脱炭素戦略における3つの柱としている。この戦略は2040年までに販売するすべてのトラックをゼロ・エミッションにするという同社の目標をに向けたものだ。
B100バイオディーゼルが利用可能なのは、FL、FE、FM、FMX、FH、FH16の5、8、13、17リットル級ディーゼルエンジン搭載モデルの一部だが、利用可能なモデルは市場によっても異なるので、事前に確認が必要。なお、バイオディーゼル認定モデルは同時にユーロ6排ガス基準の要件も満たしている。
欧州規格「EN14214」によって定義されたバイオディーゼルは脂肪酸メチルエステル(FAME)とも呼ばれる。FAMEの特性は軽油と似ているが、燃料中に含まれる酸素のため構造・性状は異なり、腐食性もあるため非対応エンジンで燃焼すると車両を損傷する可能性がある。
バイオディーゼルは菜種油などの植物油から比較的簡単に作ることができるが、車両(エンジン)側の改良が必要となり、ドロップイン燃料ではない。
同じく植物油や廃棄物からも製造できるHVOは、製造方法は複雑になるがエンジン側の改良が不要なドロップイン燃料で、ボルボトラックスのすべてのディーゼルエンジンで利用できる。
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