大阪大学の関口清俊教授らは筋肉のもとになる幹細胞をヒトのiPS細胞から効率良く作る手法を開発した。従来はマウス由来の成分が必要だったが、人工的に合成したヒト由来の成分に置き換えて臨床応用しやすくした。筋ジストロフィーなどの病気や加齢で衰えた筋力を再生する治療への応用を目指す。
骨格筋幹細胞は筋肉にある。激しい運動やトレーニングで刺激すると増え、傷付いた筋肉を再生する。筋力が低下する遺伝性の難病である筋ジストロフィーや、加齢で筋力が低下するサルコペニアの治療法としてiPS細胞から作った骨格筋幹細胞を移植する再生医療に期待が集まる。
骨格筋幹細胞をiPS細胞から作る方法は従来もあったが、細胞の培養にマウス由来のたんぱく質を使うため臨床応用が難しかった。また幹細胞ができる効率が1割程度と低かった。
研究チームはヒト由来のたんぱく質であるラミニン421を人工的に合成し、マウス由来の成分と置き換えた。このたんぱく質はiPS細胞の増殖や骨格筋幹細胞への変化を促す。幹細胞を作る効率は2倍の2割に高まった。
研究チームの京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の桜井英俊准教授は「今回の作製手法は臨床応用に向けた重要なマイルストーンになる」と説明し、まずは手や指の筋肉を治療する方針だ。ただ、臨床応用に向けては「より純度を高めることが最重要課題だ」とし、培養技術の改良も進める。
大阪大とCiRAなどは成果を国際科学誌「アドバンスト・サイエンス」に掲載した。開発した培養技術は大阪大発スタートアップのマトリクソーム(大阪府吹田市)を通じて製品化したい考えだ。
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