収穫されるブランド梅「七折小梅」。実がなっている場所もまばらだ=愛媛県砥部町で2024年5月24日午前9時31分、広瀬晃子撮影

 四国最大の小梅の産地、愛媛県砥部町七折地区の特産「七折小梅」が記録的な大凶作に陥っている。今季も収穫が始まったが、梅にとって悪い気象条件が重なり、収穫量は例年の約10分の1に激減する見込みだ。農家は「50年近く栽培してきたが、ここまでひどい不作は経験したことはない」と肩を落とす。

 同地区の梅栽培は100年以上の歴史があり、生産量は県内の約8割を誇る。「七梅小梅」は、県のブランド産品にも認定。小梅としては大粒で、糖度が高く、果肉や皮が柔らかいのが特徴だ。主に梅干しや梅酒に使われる。現在は、20戸の農家が計約15ヘクタールで栽培。県内を中心に九州、関東、関西などに出荷している。

 農事組合法人「ななおれ梅組合(JAえひめ中央七折梅部会)」の代表理事組合長、竹内勝さん(68)によると、凶作の原因は主に降水量。昨秋の肥料を与える時期は雨が少なく、栄養が十分に行き届かないまま越冬し、開花時期は逆に雨が多く、うまく受粉できなかった。もともと少なかった実も、強風などで落下したという。例年の収穫量は50~60トンだが、今季は5、6トンの見込みで、組合全体の損失額は3000万~4000万円と試算。価格も1・5倍ほどに上がるという。

七折小梅の収穫量

 竹内さんの園地では収穫初日の24日、家族らが実を手で取って、かごに入れるなどしていた。妻の美智恵さん(67)は「いつもは実が重すぎて、枝がしなるほど。1年かけて世話をしたのに悲しい」と話す。実が少ないため例年より収穫期間も短く、5月いっぱいで終了する予定だ。

 小梅は豊作の年と不作の年が交互に来る「隔年結果」だが、竹内さんによると、これまでは不作の年でも30~40トンは収穫できたという。

 また、近年は老木化などで豊作と不作の差が広がっているため、県などは2021年度から、古木を新しい苗に植え替える「七折小梅産地再興支援事業」に取り組んでいる。毎年1ヘクタールずつ改植しており、現在は全体の3分の1ほどが終了した。竹内さんは「和歌山など他の梅の産地も不作だと聞いているが、十分な量を提供できず申し訳ない。今後は若い木を増やしてV字回復を目指し、安定した量を収穫できる体制を作っていきたい」と話している。【広瀬晃子】

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