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岸田総理肝いりで、来月から実施される『定額減税』をめぐり、林官房長官が29日「6月の給与から減税ができない場合は、労働基準法に違反する可能性がある」と発言しました。企業からは“事務作業が間に合わない”との悲鳴が上がっています。

■政府「労働基準法に違反も」

定額減税の企業向け説明会には担当者が詰めかけ、定員オーバーとなっていました。

小売業経理
「(自分の)区の説明会がいっぱいで取れなくって。探し出してやっとここに来られました」
「皆さんすごく並んで質問していて。ほぼ全員が質問に行ったのでは」
「準備という準備はまだしていないですけど、やるしかないです」

通信サービス業事務
「そんなに大きい会社ではなく、私1人でやっているので。もうちょっと分かりやすくならないのかなって。質問も大体、国税庁のホームページを見て下さいで終わっていたので。税金払っているのにこれかって正直思っちゃいました」

建設業経理
「どうなるかなっていうのが不安なんですけどね。あと1カ月を切っているので、間に合わせないとまずいですよね」

こうしたなか、林官房長官の口から飛び出したのが…。

林芳正官房長官
「6月の給与で源泉徴収から定額減税をしなければならないとされている労働者に対して、これを行わない場合は労働基準法に違反し得るものと考えられます。ただし、一般論ですが直ちに罰則が適用されるものではなく、違反の対応等に応じて個別に判断されると承知しています」

違法になるというのは、労働基準法24条の規定です。「賃金は、その全額を支払わなければならない」と定めています。6月の給与から定額減税が始まりますが、会社の事務作業などが間に合わずに減税できなかった場合、従業員は税金を多く取られて、その分、手取りが減ってしまうため、法律違反にあたるというのです。

建設業経理
「(Q.来月の処理が間に合わないと、労基法にひっかかる場合があると)そういったことは(税務署は)お話されてなかった。私自身もそこまで理解がなかった」

岸田総理が指示した、ボーナスがある6月から減税。定額減税に関する法律が成立したのは3月の末。企業側は6月までの2カ月ほどで、給与システムの改修など対応を迫られています。こんな本音も漏れます。

建設業経理
「もうちょっと簡単にならないかなって。例えば年末調整で一気にバンと処理ができないかなと」
小売業経理
「(Q.年末調整までに整えればいい)『それはできません』ってハッキリ」
「(Q.本音としては)年末調整で一括でやりたかったです」

年末調整で減税するなど、6月に間に合わなかった場合、罰則を科されることはあるのでしょうか。厚労省などによると、まずは会社側に是正を求めるのが通常で、労基法違反にあたるとしても、罰金に発展するようなケースは、悪質性・重大性がある場合に限られるということです。

さらにもう1つ負担になっているのが、給与明細に減税額を明記することです。その恩恵を実感できるようにと政府が義務付けましたが、事務手続きが企業の大きな負担になっていると指摘されています。これについても国会で質問が飛びました。

共産党 小池晃書記局長
「従業員などの減税額を給与明細に記載するように求めた。これ悲鳴が上がっています。給与明細に定額減税額を記載しなかった場合、罰則はあるのか」

国税庁 星屋和彦次長
「個別具体的な判断になるものと考えていますが、例えば6月の給与明細書の交付時には対応が間に合わず、定額減税額の記載がなされなかったような場合につきましては、基本的に罰則が適用されることはないと考えています」

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■経済“3本柱”で政権浮揚図るも…

■経済“3本柱”で政権浮揚図るも…

政治部官邸キャップ・千々岩森生記者に聞きます。

(Q.岸田総理肝いりの定額減税ですが、自治体や経理担当者からは不満の声が聞こえてきます。岸田総理にとっては想定外ですか)

千々岩森生記者
「総理周辺からは『いよいよ減税が始まるのに、マイナス面ばかり取り上げられて残念だ』と、意気消沈した声も聞かれます。内部では、せっかくの減税だからアピールしたいという派と、静かにスタートすべきという派と、割れているようにも見えます。岸田総理はそもそも、今年は経済が政権浮揚のカギだと考えていました。国会でも『経済、経済、経済』と連呼した場面がありましたが、まずは年初来の“株高”、3月の“賃上げ”、そして6月の“定額減税”この3本柱で政権を立て直す。そしてあわよくば、会期末の6月に解散というシナリオも年明けには持っていました。ただ、円安・物価高で実質賃金が上がらない。さらに、裏金問題がいかんせん重すぎて“経済3本柱”では求心力の回復には程遠いのが現状だと思います」

(Q.“政治とカネ”をめぐる、政治資金改正法の改正案については、自民党の修正案に、公明党がかろうじて賛成に回る方向です。官邸はどう受け止めていますか)

千々岩森生記者
「まだ最終決着ではないものの、官邸サイドには若干、安堵感もにじんでいる感じを受けます。公明党では『あまり岸田総理を追い込んで、解散されたくない』との声も聞こえてきます。ただ今回、軟化した理由は、都知事選が近付いてきたことだと見ています。公明党としては、クリーンな政党をアピールしたい。一方で、選挙を前に、自民党とのバラバラを見せるのも得策ではない。会期末の6月後半になれば、完全に選挙モードです。早く決着させて、自公で結束して都知事選に臨みたいのが本音だと思います。もう1つ挙げるなら、これまで急先鋒だった立憲民主党が、パーティーの開催問題で二転三転したと批判されたことで、国会全体の政治改革の機運に水を差された側面も否定できません。今後ですが、自公で修正案を取りまとめて、週明けに衆院を通過。そして、会期内に成立というのが、29日時点では、うっすらと見えてきた感じではあります。ただ、これで政治不信の払拭かと言われると、なかなか難しそうです」

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