小林製薬(大阪市)の紅こうじ成分を含むサプリメントで健康被害が報告され、機能性表示食品への不安が高まっている。問題の発覚後、消費者庁は制度の見直しに乗り出した。2015年に始まって急拡大した機能性表示食品とは、そもそもどんなものなのか。国の動きやサプリメントとの付き合い方なども含め、2回に分けて紹介する。(河野紀子)

健康被害が明らかになっている小林製薬のサプリメント

 機能性表示食品は、安倍政権の規制緩和で、15年4月に始まった。「おなかの調子を整える」「脂肪の吸収をおだやかにする」など、期待できる効能(機能性)を表示した食品。企業は安全性や効能を示す論文など、科学的根拠を消費者庁に届け出る。国自体は安全性と効能は審査せず、あくまで企業任せの制度だ。商品数は約7千件に上る。  「効能があるなら、副作用もある。健康被害が起こる可能性があるのに、安全性の確認が不十分だ」。食の安全に詳しい奈良県立医科大公衆衛生学講座教授の今村知明さん(60)は言う。

◆トクホより低コスト

 健康食品のうち、機能性を表示できる保健機能食品は三つ。機能性表示食品と、特定保健用食品(トクホ)、ビタミンやカルシウムなどの栄養機能食品だ=表。トクホは機能性表示食品と混同されがちだが、企業は最終製品で人を対象とした試験もするほか、国は安全性と効果を個別に審査して許可する。一方の機能性表示食品はいずれも不要なため、トクホと比べて開発コストが低い。20年には市場規模でトクホを逆転。調査会社の富士経済(東京)の試算では、23年は6865億円を見込み5年前の3倍と急増している。  今回、特に問題になったのは、錠剤やカプセルなどのサプリメントだ。機能性表示食品の約55%を占め、効率的に摂取できるように、成分が濃縮されている。小林製薬が、問題発覚を受けて自主回収している5製品も全てこの形状だ。  サプリメントは、医薬品のような形状だが、あくまで食品。この形状はかつて、医薬品以外では規制されていたが、01年に解禁。機能性表示食品だけでなく、他の健康食品でも数多く販売されている。  今村さんは「サプリメントは毎日飲み続けるのが前提。濃縮した特定の成分を飲み続けると、食品でもリスクを伴う。有害な成分が混入した場合、さらにリスクは大きい」と指摘する。

◆製造工程管理も緩め

 医薬品の場合、厳格な適正製造規範(GMP)が義務化され、原料を含めて全ての製造工程で厳しいチェックがある。さらに患者は医師の定期的な診察や検査を受けて、副作用の有無を確認する。  一方で、サプリメントは医薬品より緩い健康食品のGMPに沿った製造工程管理が推奨されているだけ。製品ロットごとの検査の義務もない。また、服用して副作用が出ても悪化するまで自分では気付きにくい。  小林製薬の問題では、被害が報告された製品ロットから、腎障害を引き起こす「プベルル酸」など意図しない複数の物質が見つかっている。今村さんは「ロットごとに品質検査する医薬品GMPのように、厳しく管理していれば、今回の健康被害は防ぐことができた可能性が高い」と語った。


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