大阪大の遠藤誠之教授(産婦人科)らのチームは15日、腰や尻付近の皮膚などが正常に閉じずに、脊髄がむき出しになる指定難病「脊髄髄膜瘤(りゅう)」の胎児に対し、妊娠中の母親の子宮を切開し、患部の皮膚などを縫合する手術に成功したと発表した。この病気での胎児手術成功は日本初という。

胎児手術について発表する大阪大の遠藤誠之教授(15日、大阪府吹田市)=共同

また、大阪大によるとこれまでに国内で子宮切開での胎児手術が行われたのは、約20年前に肺の腫瘍での1例のみ。それ以来の実施で、画期的な成果という。

手術は2021年4月から大阪大病院と国立成育医療研究センター(東京)で計6件実施。5件の子は既に生まれ、出生後に手術した場合と比べ、いずれも症状に改善が見られた。うち1件は症状自体は良くなったが、術後の子宮内感染で早産になり、合併症で生後3カ月で死亡。残りの1件は妊娠継続中。

脊髄髄膜瘤はむき出しの脊髄に損傷が生じるため運動や排せつ機能に障害が現れる。妊娠中に神経障害が進行することで知られ、海外では既に胎児手術が普及。チームは「患者や家族が希望を持てるよう、日本でも胎児手術を選べる体制を整えたい」としている。

手術には産婦人科医や小児外科医のほか、脳神経外科医も必要。日本ではチームづくりが難しかったこと、手術が可能な妊娠早期での診断率が海外に比べ低いことなどから行われてこなかった。

今回の手術は脊髄髄膜瘤の胎児で、かつ突然死のリスクがあるタイプを対象とした。妊娠26週未満で母体を開腹し、子宮を5〜8センチ程度切開。エコーで胎児の心拍などを確認しながら、患部を治療できるよう位置を調整し、脊髄が飛び出た部分の筋肉や皮膚などを縫合した。その後は、母体の腹部を閉じ妊娠を継続。帝王切開での出産を目指した。手術で羊水が流れ出るため、人工羊水で補うほか、感染症予防のため抗生剤も使用した。〔共同〕

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