<Q> 能登半島地震の被災地の状況を見て、万一への備えの必要性を強く感じました。地震保険というものがあると聞きますが、仕組みや注意点を教えてください。(名古屋市、40代男性)

◆居住自治体で料率に差 ファイナンシャルプランナー(FP)・前田洋佑さん

<A> 地震保険は地震や噴火、津波によって壊れたり、地震に伴う火災や土砂災害に遭ったりした建物や家財の損害を補償します。ただ、地震保険単体では加入できず、原則火災保険とセットで申し込む必要があります。地震で起きた火災は、火災保険のみでは補償されません。  大地震が発生した場合、多額の保険金の支払いを損害保険会社だけで引き受けることは経営上のリスクが高いため、政府と損保会社が共同で運営し、損保側には利益が出ない公共性の高い保険となっています。被災者の生活の安定を目的とし、損保各社の間で補償内容や保険料に差はありません。  地震保険で補償される金額は火災保険の保険金額の30~50%です。上限は建物の場合が5千万円、家財が1千万円。支払われる保険金額は損害の程度によって4段階に分かれ、全損で契約金額の100%、大半損で60%、小半損で30%、一部損で5%です=図。  補償対象は、建物の柱や屋根、壁などの主要構造物です。塀やカーポートは対象外です。集合住宅の場合は自分の居室(占有部分)が対象となります。共用部分は、マンションの管理組合などが地震保険に加入していなければ補償を受けられません。  一方、家財は家具類や洗濯機、テレビ、衣類などの生活用品を指します。ただ、30万円を超す高額な貴金属や彫刻といった美術品、自動車、有価証券などは含みません。地震発生後に盗まれた家財も対象外。賃貸住宅の場合は建物は自分の資産ではないため、家財に対してのみ保険をかけることになります。  地震保険は、建物の構造や居住都道府県によって保険料が異なります。木造の建物は、鉄骨・鉄筋コンクリート造りの建物より保険料は高くなります。  都道府県で保険料が異なるのは、保険料を算出する際の基準となる「基本料率」が、政府が発生を予想する地震規模などに応じて違うからです。首都直下地震や南海トラフ巨大地震などが懸念される地域は高くなります。例えば、木造住宅で補償額を1千万円とした場合、東京都や千葉、神奈川、静岡各県は1年間の保険料が4万1100円。愛知や三重県は1万9500円で、その他多くの地域で1万1200円となっています。  ただ、割引制度が設けられています。建物の耐震性の高さなどに応じて、保険料が10~50%割り引かれます。保険期間は1~5年の中から選びますが、複数年契約して一括で支払う場合も割引されます。このほか地震保険料控除もあり、一定の金額の所得控除を受けられます。  また、火災保険の契約期間途中からの加入も可能。住宅ローンの返済を抱えたまま、住宅再建の費用が必要となる場合もありえます。家計の支えの一つとして、検討してみてもらいたいと思います。

<詳しく!>付帯率は右肩上がり

 損保会社でつくる損害保険料率算出機構(東京)によると、火災保険に合わせて地震保険がどの程度契約されているかを示す「付帯率」は上昇傾向にある。2001年度は全国平均で33.5%だったが、22年度には69.4%に上がった。機構の広報担当者は「大規模災害の発生や防災意識の向上などさまざまな要因が考えられる」と話す。  都県別では22年度の東京都の付帯率は61.9%、神奈川県63.5%、静岡県68.3%、愛知県76.6%、三重県74.6%、岐阜県79.3%だった。能登半島地震で大きな被害を受けた石川県は64.7%。また、全世帯に占める加入率は22年の全国平均は35.0%。東京都の加入率は37.5%で、神奈川県37.4%、静岡県32.9%、愛知県44.7%、三重県33.0%、岐阜県41.0%、石川県30.2%となっている。 (古根村進然) <まえだ・ようすけ> 1985年、岐阜県多治見市出身。「MYFPまえだFPオフィス」(愛知県豊田市)代表。主に子育て世代に向けて、住宅ローンや少額投資非課税制度(NISA)などの相談に応じている。セミナー講師も務める。 

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