「インボイス制度」は消費税の納税額を正確に把握することなどを目的に去年10月に始まった新しい税額控除の方式で、事業者が仕入れ先などに払った消費税の控除や還付を受ける場合、「インボイス」という税率ごとの税額を記載したレシートや領収書が必要になりました。

また、年間の売り上げ1000万円以下の小規模事業者が制度に登録して「インボイス」を発行する場合、従来免除されていた消費税納付の義務を新たに負うことになりました。

国税庁によりますと、制度開始以降、初めての確定申告が行われたことし、個人事業主からの消費税の申告件数は197万2000件と、去年の105万5000件から2倍近くに増加し、申告納税額はおよそ6850億円と、573億円増加しました。

インボイス制度に登録して新たに納税義務を負い、確定申告をした人が87万人余りいて、申告の数や納税額を押し上げたとみられます。

インボイス制度への登録は任意で、税負担を避けるため登録を見送っている事業者がいる一方、未登録の事業者に対して、仕入れの際に払った税の控除が受けられなくなることなどを理由に、取引先が一方的に値下げを要求するなどの行為も相次いでいます。

国税庁は、専用の相談窓口を設けるなどして引き続き制度の周知に努めるとしています。

専門家「制度の意義伝えていくことが重要」

税制度や税務行政に詳しい中央大学法科大学院の酒井克彦教授は「インボイスを発行できないと、取り引きから排除される可能性があり、そのことが結果的に納税者が増えることにつながった」という見方を示す一方、「事業への影響などをおそれ、望まない形で制度への登録を選んだ事業者も少なくないのではないか」といいます。

酒井教授は「インボイス制度には、消費税の不正な申告を防止するという目的があり、国税当局が引き続き国民に理解しやすい形で制度の意義を伝えていくことが重要だと思う」と話しています。

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