2022年に新潟県北部を襲った記録的豪雨で被災し、運休が続いているJR米坂線。沿線自治体や住民は早期の復旧を求めてきたが、JRは費用負担や復旧後の活性化策を同時に検討することが必要だとして、復旧に向けた議論は平行線を辿っていた。こうした中、5月29日に沿線自治体とJRが3回目の検討会議を開催。ここでJRは、初めて「JR単体での運営は難しい」という見解を示した。

米坂線 復旧費用は約86億円と試算

2022年、県北部を襲った記録的豪雨で被災し、一部の区間で運休が続いている米坂線。

米坂線(2022年)
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JRは、復旧にかかる費用が約86億円、工事期間は5年とする試算を公表している。

沿線自治体は災害からの早期復旧を求めてきたが、JRはこれまで復旧費用の負担割合と将来的な安定運行の方策を両輪で検討する考えを示していた。

JR東日本「単独運営は困難」

こうした中、29日にJR東日本は沿線自治体との3回目の復旧検討会議を山形県小国町で開催。

3回目の復旧検討会議

この中で、JR東日本は復旧後の利用状況の試算から、沿線自治体が示した利用促進策を施したとしても、一日の利用者数は200人台に留まるとするデータを提示した。

JR東日本新潟支社の三島大輔企画総務部長は「通勤や買い物の際の交通手段を自家用車から鉄道に変更いただくなど、沿線の皆様のライフスタイルの大幅な変更などにより鉄道の利用促進をしたとしても、鉄道輸送の大量性が発揮できるとは考えにくい結果となった」と説明。

JR東日本 新潟支社 三島大輔 企画総務部長

その上で「被災前と同じようにJRが運営することを前提とした復旧は、民間企業としては持続可能性の観点から難しいと考えている」と復旧後の米坂線をJR単体で運営することは難しいという見解を初めて示した。

“運営パターン”を提示 バス転換案も

同時に、自社での単体運営を含めた4つの運営パターンを提示。

そこには、JRが運営し、沿線自治体が施設を保有する上下分離方式、第3セクターなど地域事業者による運営に加え、バスへの転換も示されている。

三島部長は「バス転換の選択肢を取った場合には鉄道を存続させることはないということです」と廃線の可能性についても触れた。

県は「JR単独運営が望ましい」

これに対し、新潟県交通政策局の太田勇二局長は「単なる大量輸送という特性だけではなくて、例えば災害時の機能であったり、地方創生の観点であったり、様々な側面を持っているものであるので、一面だけ捉えると難しいと、私はそういうふうに受け止めている」と話した。

新潟県 交通政策局 太田勇二 局長

さらに、山形県とともに「JRが単独で運営することが望ましい」という認識を示した。

JR東日本は今後、4つの提案を元に沿線自治体との議論を深めたい考えだ。

(NST新潟総合テレビ)

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