発達障害など様々な生きづらさを抱える子供たちの「療育」の場にしようと鹿児島・鹿屋市で展開されている「放課後等デイサービス」が、施設の老朽化で存続が危ぶまれている。運営する地元のNPO法人は、クラウドファンディングでの改築資金集めに乗り出した。

障害のある子供たちの支援の場

鹿屋市寿8丁目の建物の一角を学校を終えた子供たちが次々と訪れる。
子供たちが「ただいま」と挨拶すると、スタッフたちが「お帰りなさい、学校どうだった?」と声をかけた。

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ここは、障害のある子供たちを支援する放課後等デイサービスだ。
NPO法人「リトルレングス」が2018年7月から運営していて、現在48人の子供たちが通っている。

鹿屋市全体では、51の事業所がこうした放課後等デイサービスを運営していて、約800人が利用しているという。

施設の中ではトランポリンを楽しむ子供の姿もあった。友達と遊ぶだけでなく、ひとつの物事に10分間集中させて集中力を磨く時間を設けるなど、子供たち一人一人の可能性を引き出す様々な取り組みを進めている。

存続に向けクラウドファンディングも

子供たちが思う存分楽しむ一方で、この場所はある問題を抱えていた。それは、建物の老朽化だ。

建築から35年、様々な業態を経てきたが特に雨漏りがひどく、2023年8月の台風6号では広い範囲が水浸しとなった。このままでは子供たちの安全が確保できなくなるおそれもある。

NPO法人「リトルオレンジズ」の日野尚子代表理事によると、職員は、子供たちのために少しでも安全に衛生的に過ごしてもらえるように心を込めて施設を大切に使っていたが、限界を迎えたという。

リトルオレンジズは運営を継続するため、建物の改築を決めた。
改築費用は約8000万円。その費用の一部を賄うため、2024年4月に目標金額を300万円に設定し、クラウドファンディングもスタートした。

改築後の施設で目指すのは、“憩いの場だ。多くの人が行き交う今の場所にカフェや会議室などを導入し、障害のある人もない人も気軽に立ち寄れる場を目指すという。
充実させるのはハード面にとどまらない。スタッフの資格取得を推奨し、人材育成に取り組むことで、ソフト面の充実にもつなげたいと考えている。

リトルオレンジズで保育士を務める谷川由紀子さん(71)は開所時からのスタッフだが、子供たちとの関わりに役立てばと、68歳のときに保育士の免許を取得し、2024年3月には社会福祉士の国家試験にも合格した。

資格取得の理由について、谷川さんは「限られた人、限られた場所ではなく、広く役立つようなことができたらいいと思ったから」と打ち明けた。利用者を行政機関につなげるためには、社会福祉士という資格でなければできないつなげ方があるという。

多様な人が交わる楽しい場所に

そしてクラウドファンディングはどうだったのか。期限は5月31日の午後11時までだったが、前日に目標金額の300万円を超え、プロジェクトは見事、達成した。

日野代表理事はこの施設の目指すところとして、「心の中からバリアフリーが起きる場所」と表現した。そこには、地域の障害者、障害児にかかわらず老若男女、いろいろな人が交わることができる楽しい場所にしたいという思いが込められている。

夢への一歩を踏み出したリトルオレンジズ。その挑戦はまだ始まったばかりだ。

(鹿児島テレビ)

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