公立保育施設で出た子どもの使用済みおむつを保護者に持ち帰らせず、施設で廃棄処分する動きが群馬県内の自治体に広がっている。「持ち帰りは不衛生で、保護者や保育士の負担が大きい」と不評だからだ。民間団体によると、県内では施設で処分する自治体が2022~24年の2年間で約3・5倍に増え、保育環境にゆとりが生まれたという声もある。一方で私立保育施設への助成は少なく、課題も残している。
サブスクで保護者も施設も負担減
太田市は今年度から、定額で保育施設に届く紙おむつとお尻拭きが使い放題になる「サブスクリプション(サブスク)サービス」と、使用済みおむつの施設での廃棄処分費を支援する事業を始めた。サブスクは市内の保育園や認定こども園など57施設に通う0~1歳児約1600人が対象で、利用料の全額を市が負担。処分費は施設の規模に応じて算定された額の2分の1を上限に助成する。
「子どもが寝た後、夜遅くにおむつの準備をする必要がなくなった。物価高なので家計面でも助かる」。こう話すのは、長女(1)を藪塚本町保育園(同市藪塚町)に預けている会社員の高橋知佳子さん(32)。これまでは事前に紙おむつ一枚一枚に名前を記入し持参していたが、サブスクの導入で負担が減ったという。
保育施設側にとっても、おむつの管理をしなくてよくなるなどメリットは大きい。同園では現在0~1歳児が約50人在籍している。紙おむつは1日当たり1人6~8枚の利用があり、担当する15人の保育士で間違えないよう園児ごとに管理するのは、相当神経を使う作業だ。保育士の二宮美絵さん(38)は子どもと向き合う時間が増えるなど「保育業務にゆとりが出てきた」と歓迎。処分費の助成も園の負担軽減につながっているという。
群馬は9割「施設廃棄」、全国平均上回る
厚生労働省がおむつを廃棄している全国の保育施設に処分費の扱いを聞いたところ、約7割が「施設の運営費で負担」と回答した。このことから市は来年度以降も事業を継続し、おむつの施設廃棄を後押ししたい考えだ。
施設廃棄の動きは県内の自治体にも広がっている。子育て支援サービス業者が運営する「保育園からおむつの持ち帰りをなくす会」(大阪市)が、公立保育施設のある全国自治体を対象に実施した24年の調査によると、群馬県は「施設廃棄」の割合が92・6%(25自治体)だった。22年の25%(7自治体)から大幅に増え、全国平均(89・7%)を上回った。「保護者の持ち帰り」は7・4%(2自治体)に減った。
これは厚労省が23年1月、施設廃棄を推奨する通達を出したことを受けて、各自治体が対策を取った結果とみられる。
ただ私立保育施設については、実態を把握できていないのが現状だ。なくす会の調査によると、私立施設へ補助を出している自治体は全国で15・7%にとどまる。県内でも渋川市などわずかだ。
県は23年度、私立を含めた全保育施設を対象に使用済みおむつ回収ボックスの設置費用を補助する事業を実施したが、廃棄費用に対しては行っていない。なくす会の担当者は「私立施設へ廃棄費用の補助をしている自治体はまだ少ない。行政の支援が課題だ」と話した。【湯浅聖一】
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