入札不落について説明する奥田理事長(左)=北九州市小倉北区の北九州市役所で2024年6月5日午後1時35分、成松秋穂撮影

 NPO法人「抱樸(ほうぼく)」(北九州市八幡東区)を中心に小倉北区神岳で進める福祉拠点施設「希望のまち」の整備を巡り、抱樸は5日、施設の建設を担う事業者の入札が「不落」となったと発表した。資材価格の高騰が原因で、2025年秋を目指していた施設開所は少なくとも数カ月遅れる見通しだ。

 「希望のまち」は、特定危険指定暴力団「工藤会」の本部事務所跡地に整備予定で、生活困窮者らが暮らす救護施設や、DV被害者らが一時避難するシェルター、地域交流拠点スペースを備える。

 抱樸によると、施設設置主体の社会福祉法人が総合評価方式の一般競争入札を4月に公告し、事業者2社が手を挙げたが1社が辞退。5月29日に残る1社から入札書類を受け取り、後日開札したが、応札価格が予定価格の12億円を上回り不落だった。今後、再公告に向け準備するという。

 建設費を巡っては、資材価格の高騰で当初の見積額約10億円(設計費含む)が膨らんだため、施設を4階建てから3階建てに設計変更し、見積額を約13億1000万円(うち設計費1億1000万円)とした経緯がある。

現時点の「希望のまち」のイメージ図。1階によろず相談窓口やレストラン、2、3階に救護施設や一時避難シェルターなどが入る=手塚建築研究所提供

 抱樸はこれまでに、日本財団の助成5億円、金融機関からの融資5億円を受け、個人や企業から約3億3500万円(2月末時点)の寄付が集まったが、入札不落を受け、設計変更と追加資金調達を検討するという。

 北九州市役所で記者会見した抱樸の奥田知志理事長は「予定通りに期待に応えられないことを心から謝罪したい」とした上で「絶対に諦めない。物価高騰は生活困窮者を含め社会全体が直面する問題。こんな事態だからこそ『希望のまち』は必要だ」と力を込めた。

 希望のまちプロジェクトの企業賛同人会呼びかけ人を務める津田純嗣・北九州商工会議所会頭は定例記者会見で「ショックを受けている。北九州が変わる一つのシンボルであり、世の中の役に立つ施設でもある。産業界としてサポートするため、どのような形でお役に立てるか相談し合いたい」と述べた。【成松秋穂】

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