新年度から、子育て世代に向けた国のさまざまな支援策が本格化する。恩恵を受けられる額は、所得やきょうだいの年齢差によって変わることがあり、チェックが必要だ。児童手当の拡充など主な施策について、子育て世代の家計に詳しいファイナンシャルプランナー(FP)の八木陽子さん=写真=に聞いた。(砂本紅年)

◆児童手当

 児童手当は現在、中学卒業まで月1万円(0~2歳児までは月1万5千円)で、所得制限がある。少子化対策関連法案などでは、今年10月分から支給期間が高校卒業(相当含む)まで延長され、所得制限もなくなる=表<下>。  「所得制限ぎりぎりで引っかかる子育て家庭は少なくなかったので、安心感につながる」と八木さん。  第3子以降の支給額は、現在の月1万5千円から3万円に倍増する。ただ、注意したいのは第3子への加算期間は、第1子が22歳になる年度末までという点。それ以降は、第3子は第2子とみなされ、月3万円だった手当は月1万円に減る。誕生月やきょうだいの年齢差により額に差が出る。

◆扶養控除

 児童手当が高校生年代まで延長されることを受け、2026年以降、16~18歳の子どもがいる世帯の扶養控除が縮小される。二重で優遇されることを防ぐ狙いがある。  こういった世帯の扶養控除は、所得税が38万円から25万円に、住民税は33万円から12万円に縮小。児童手当の拡充と扶養控除の見直しを差し引きで考えると、児童手当の年12万円の恩恵を丸々得られるのは非課税世帯のみになる。控除は高所得世帯に有利に働くため、所得が多い世帯ほど児童手当の恩恵は薄まる。  トータルでの家計への影響が気になるが、「結論から言えば、従来と比べて損をする子育て世帯はない。どの年収帯も結果的にプラスになる設計で、そこは安心できそう」と八木さん。ただ、「所得によって差し引きで受けられる恩恵は違う」とも。例えば夫婦のどちらかが働き、高校生の子どもが1人いる年収558万円以上752万円未満の家庭の場合、現状と比べて増えるのは8万6千円。各家庭で差し引きして増える金額を確認しておきたい=表<下>。

◆大学無償化

 このほかに注目されるのが、25年度から3人以上の子どもがいる多子世帯を対象に、大学などの高等教育機関の授業料や入学金を無償化する制度だ。国公立大は年間の授業料約54万円と入学金約28万円、私立大はそれぞれ約70万円と約26万円を上限に免除。所得制限は設けず、医学部など6年制の学部や短大、専門学校も対象となる。  ただし、扶養する子どもが3人以上いる場合が対象。3人きょうだいでも、第1子が就職などで扶養を外れると、第2子以降は無償化の対象外となる。「年が離れているきょうだいだと恩恵は少なくなる。あまり公平な制度とは言えず、少子化対策になるとも思えない」と八木さんは語る。  子どもの生まれた時期などで恩恵に差が生じることに違和感を覚える人は少なくないようだ。例えば、東京新聞(中日新聞東京本社)運営の子育てサイト「東京すくすく」内の連載「チェック!子育て家計術」では、読者からの疑問や不満を示す投稿が数多く寄せられている。

<扶養控除> 養っている親族数に応じ、実際の所得金額から一定額を差し引き、所得税と住民税の負担を軽くする仕組み。民主党政権時代に子ども手当を創設する一方、15歳以下の扶養控除を廃止した経緯もある。




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