東日本大震災の発生から11日で13年。津波堆積物を含めて3千万トンを超える災害廃棄物の処理が、大きな課題となった。今年の元日に発生した能登半島地震の被災地も、同じ問題に直面している。その処理の難しさや平時からできる対策について、名古屋大減災連携研究センター准教授の平山修久(ながひさ)さん(53)=写真、災害環境工学=に聞いた。 (河野紀子)  -災害廃棄物の処理が難しい要因は。  廃棄物処理法では一般廃棄物として扱い、原則は市町村に責任がある。大災害が起こると、短期間に年間の処理能力を大きく上回る廃棄物が出る。それを平時と同じシステムで処理しないといけない。  課題として認識された契機は、1995年の阪神淡路大震災だ。多くの家屋が倒壊し、横倒しになった高速道路も含めて、約2千万トンと大量の災害廃棄物が発生した。すべての処理を終えるのに3年かかった。2011年の東日本大震災でも、津波堆積物を含めて約3100万トンに上り、被災地の外に運ぶ広域処理が必要になった。こちらも、ほとんどの処理を終えるまでに3年かかった。  今回の地震については、石川県は244万トンと推計。特に奥能登の4市町(珠洲市、輪島市、能登町、穴水町)の被害が大きく、このうちの6割が集中している。最多の珠洲市は約58万トンと、年間処理量の132年分にもなる。山間地のため平地が少なく、災害廃棄物を一時的に集めておく仮置き場の確保も難しい。

能登半島地震の発生から約1カ月後の被災地。倒壊した家屋のがれきが道路脇に残っている=石川県珠洲市宝立町で

 -過去の教訓は生かされているのか。  東日本大震災の後、国は迅速な処理のために必要な法改正を行ったほか、環境省が主導して全国8カ所に地域ブロック協議会を設置。自治体の担当者に助言をしたり、共同訓練をしたりしてきた。  今回、早い段階で、災害廃棄物の出し方、分別の方法が住民に通知された。協議会のネットワークを生かし、ノウハウを持った環境省の職員が、市町に支援に入ったと聞いている。その成果だと思う。  -石川県は2月末、災害廃棄物処理実行計画を公表。海上輸送も含めて県外で広域処理を進め、2年以内の完了を目指している。今後、処理を進める上で必要なことは何か。  まずは、復興後のまちづくりのビジョンと実現に向けたロードマップ(工程表)を示すことが大事だ。これに沿って、災害廃棄物の処理をどう進めるか、考えるべきだ。例えば住民のコミュニティーを維持するため、元の場所に仮設住宅や災害公営住宅を建てるなら、人材と機材を集中的に投入して災害廃棄物の撤去を素早く行う。応急的に公園などの公共スペースを仮置き場にするという方法もある。  -近く発生が予想される南海トラフ巨大地震では、最大で2億トンを超える災害廃棄物が出ると推計されている。平時にできる対策はあるのか。  住宅の耐震化と家具の固定だ。1981年以前の旧耐震基準で建てられた住宅は、震度6弱を超える揺れで倒壊の恐れがある。そうなれば、家財を含めて家がまるごと廃棄物になってしまう。私の推計では、一般的な木造住宅1棟が全壊した場合は117トン。耐震化で倒壊を免れれば、命と財産の両方を守ることができる。  今回の地震でも、2000年以降に建てられた比較的新しい建物は、ほとんど被害が出ていない。国や自治体がもっと、耐震補強工事の費用に補助金を出すべきではないか。そうすれば、耐震化に踏み切る人は増えるはずだ。


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