「当たり前だ」とくれば、ついつい続けて「のクラッカー」と言ってしまう人、割といるのではないか。子どものころ本当に「あたり前田のクラッカー」があると知って、うれしくなった。でも、お菓子よりダジャレを口にした数の方が多いかも。「本家」のこと、もっと知りたい! 前田製菓(堺市堺区)の公式X(ツイッター)を担当する女性社員3人組「マエダガールズ」のおふじさん、おたけさん、おすずさんに聞いてみた。
まずは実物をチェック。赤が基調のパッケージには「あたり前田のクラッカー」と大きく書かれている。クラッカーは直径3センチ足らずの楕円(だえん)形で、二つの穴と「M」字の切り込みがある。
「M」は前田の頭文字だが、「火の通りをよくして、均一の厚みにする効果があるんです」とおふじさん。一口サイズで食べやすく、サクサクした食感とシンプルな塩味が後を引く。そのまま食べるのはもちろん、チーズなど他の具材を乗せたり挟んだりして、幅広く楽しめる。
超人気番組から生まれたフレーズ
「あたり前田のクラッカー」のダジャレが誕生したのは、「てなもんや三度笠」(朝日放送、1962~68年)だ。あんかけの時次郎(藤田まことさん)と珍念(白木みのるさん)が旅をする時代劇コメディーで、関西での平均視聴率は37・5%、最高64・8%だった。
その超人気番組を、前田製菓は1社提供のスポンサーとして支えた。藤田さんが「俺がこんなに強いのも、あたり前田のクラッカー」と言いながら、着物の懐からクラッカーを取り出したのがウケにウケ、子どもから大人までまねをした。実はこのフレーズ、会社側の提案ではなく、ダジャレ好きの番組スタッフが思いついたのだという。
あらためて「てなもんや三度笠」の映像を確認してみると、藤田さんが懐から取り出したのは、四角いクラッカーだ。あれっ、一口サイズの「あたり前田のクラッカー」じゃないんですね。
すると、「後で便乗しました」とおふじさんが笑う。このフレーズが浸透した後でちゃっかり、それまで「前田のクラッカー」と記載していたパッケージを「あたり前田のクラッカー」に変更した。駄菓子屋さんなどで売っている小袋にも「あたり前田のクラッカー」とある。ダジャレを言いながら取り出したら、場が盛り上がりそうだ。
ただ、有名さゆえの悩みもある。「ダジャレがお菓子(の存在)に直結しないんです。『まさかお菓子があるとは』と驚かれることすらあります」とおふじさんは明かす。特に若い人は知らないことが多いのだとか。それは、非常にキビシー!
その状況を打開しようと、マエダガールズは情報発信に力を注いでいる。同社は素材や形状を変えたさまざまなクラッカーや焼き菓子を販売。「あたり前田のクラッカー」はもちろん、おつまみにぴったりのピリ辛クラッカーや、チョコレートクリームを挟んだビスケットなど、多彩な商品をXやイベントなどでPR。ホームページではアレンジレシピも紹介している。
「まえだくん」アピールに一役
さらに親しみやすさもアピール。Mの切り込みを横に倒すと、口をとんがらせた人の顔のように見えることにちなんだキャラクター「まえだくん」をXに登場させている。おすずさんが「(まえだくん以外にも)オリジナルキャラクターを作って、多くの人に親しんでもらいたい」と夢を語れば、おたけさんは「他社とのコラボもやってみたいです」と話す。楽しみながらアイデアを出し合っているんですね。
前田製菓は1918年、「前田西洋菓子製造所」として創業。戦中戦後に乾パンを製造した技術を生かし、クラッカーの製造を手がけるようになった。
5月で創業107年目を迎えた。「せっかく知られているダジャレなので、お菓子につながるようなアピールをしていきたいです」とおふじさんは意気込む。ともに長く愛されるクラッカーとダジャレ。子どもから大人まで楽しく口にできるのも「あたり前田のクラッカー」!【水津聡子】
健康志向、人気の「おから」
野菜や穀物入りのクラッカーなど、健康志向に合わせた商品も販売している。人気の「カラッとおから」は、おからを使ったヘルシーな焼き菓子。食感や焼き加減にこだわっており、香ばしい大豆の風味とやさしい甘さが人気を集めている。
プロテイン(たんぱく質)配合のクッキー「WAY TO GO」は、同社が自転車やサッカーチームを応援している縁もあり、運動中でも食べやすいように味を工夫。ユズピール入りなど5種類を販売している。
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