新年度や新生活がスタートした4月は、入社後の配属や人事異動で職場が変わった人もいるだろう。気分一新でバッグを新調する人も多い時季だ。
また、学生が就職活動を考える季節でもある。大学生の場合、最近は3年の春から就活スタートが多いと聞く。その際、どんなバッグを選んでいるのか。
今回、あらためて「仕事用バッグの選び方」を第一線で働く社会人に聞くとともに、選ぶ際のポイントを「ポーター」(PORTER)ブランドで知られる吉田カバン(※)に聞いた。
(※)正式社名は株式会社吉田。名称は「吉」の「士」の部分が「土」
この記事の画像を見る(6枚)一番人気は「PCが安定して入るリュック」
まずは現在使っている仕事用バッグについて、20代や30代の会社員はこう話す。
「バッグにPC(パソコン)が安定して入るかを重視します。満員電車での出勤のため、多少つぶされてもよいように、やわらかい素材のバッグを選んでいます」(20代の女性)
「営業職のため手持ち資料が多く、バッグ本体が軽量化したものを選んでいます」(30代の男性)」
こうした傾向について、吉田カバンのマーケティング部・名倉楓也氏は話す。
「最近は仕事用でもリュック(ここではディパック含む)が圧倒的に人気です。年齢や役職も問わなくなりました。とはいえ、お店に来られるお客さまは、総じて20代から40代の方は最初からリュックを探しに来られ、50代以上の方は手提げも探されるという印象です。そのうえでPCが安定して入り、バッグ本体が軽いタイプを求められます」
中には、「気分を上げるため、好きなブランドのバッグを購入しています」(30代女性)という人もいた。機能性重視で選ぶ人が多いが、情緒性を意識する人もいる。
「その気持ちもわかります。当社の愛用者の中には、3月15日にバッグから財布、キーホルダーなどの小物一式を買い替えた方もおられました。2024年のこの日は『一粒万倍日』『天赦日』『寅の日』の3つが重なった最強開運日。財布などを新調したり使い始めたりするといい日とされています」(名倉氏)
中に入れるPCも大きくなった
これまでの取材では、「コロナ禍が明けて出勤するようになり、PCの持ち運びが増えてリュックに変えました」(40代の女性ほか)という声を聞いてきた。今回も人事異動で職種が変わり、「さまざまな資料を持っていくことが多く、肩掛けからリュックに買い替えました」という30代男性もいた。
「ビジネスシーンでのリュックは市民権を得て、この場面だからNGということはほとんどありません。営業職でもそうですし、大切な取引先との会食でもリュックで問題ない風潮です」
こう話す名倉氏が指摘するのが、消費者に選ばれるリュックの変化だ。
「少し前ならビジネス用は、リュックの形がスクエア(角が四角)を選ぶ人も多かったですが、服装のカジュアル化が進み、最近はラウンド(丸い)タイプが好まれます。中に入れるPCは13インチ→16インチとなり、バッグに2台のPCを入れる方もおられます」(同)
2021年、同社は「POTR(ピー・オー・ティー・アール)」というブランドを発表した。
「POTR/SCOPE(スコープ)シリーズのソーシャルパック(税込み6万500円、以下同)が人気です。形はラウンドタイプですがシンプルなデザインで、フロントにはファスナーポケットを2つ装備。メイン収納部のファスナーは斜めに取り付けることで開閉しやすくなっています。ワークライフバランスを意識し、オン・オフどちらでも使い勝手がきき、リモートワークやワ―ケーションにも合った新しい時代のバッグです」(同)
「POTRスコープ」のリュック(同社はソーシャルパックと呼ぶ)、斜めにしたファスナーも機能的だ。カジュアル姿でもさまになる(筆者撮影)人気のリュックから紹介したが、学生の就職活動では事情が異なる。
一昨年、当時入社2年目を迎えた男性(20代前半)に話を聞いたが、「就活にあたり、黒色の手提げ型のビジネスバッグを買いました。周りの就活学生に合わせるためで、就活生スタイルの一部として、そうしたバッグを持つことが大事だと考えたのです」と学生時代を振り返っていた。
学生の就活で支持される手提げバッグ
「就活生は、やはりまだ手提げ派です。バッグ選びは服装との関連性もありますが、リクルートスーツでネクタイ姿の就活生がほとんど。ファッションで目立とうとしないで冷静なのでしょう。そんな方たちに一番人気なのが『ポーター テンション』(4万4000円)です。手提げと肩掛け、背負いの3wayタイプで、シリーズ発表から20周年を迎えましたが、不変的なデザインと機能性で根強い支持を受けています」(名倉氏)
まだ学生なのでバッグ選びの際、大半の人が代金を支払う親と一緒に来店するという。ポーター テンションのような定番タイプは、管理職世代でもある親に好評なようだ。
色についてはどうか。今回、「面接時などに気になるため、下に置いた際のイメージも重視し、色は目立たないネイビーか黒を選びました」(20代女性)という声も聞いた。
「就活生に限りませんが圧倒的に人気なのは黒で以前と変わらず、その次はネイビーです。どんな服装にも合い、汚れが目立ちにくいのも大きいと思います」(同)
前述の「好きなブランドのバッグを持つ」人も、黒やネイビーは使い勝手がいいようだ。
手提げと肩掛け、背負いの3用途で使える「ポーター テンション」。発売20年を経ても人気が高い(筆者撮影)出張など「帰りに荷物が増える日」に向くバッグ
国内出張はコロナ前と変わらない状況となり、海外出張も復活した。各種の「展示会」も増えた。出張では、お土産を買ったり、名産品をもらったりするだろうし、展示会の視察時もカタログやサンプル品を受け取る機会が多い。行きよりも帰りの荷物が増える日だ。
こうした日に支持されるバッグとして、吉田カバンからユニークな商品も出た。
「『POTR/PACKS(パックス)』というシリーズが好評です。仕事やプライベートなど旅行先や旅の期間・目的はそれぞれですが、持っていく衣類の量は宿泊数によって決まります。そこでパックスは、宿泊数によって変化する持ち物の量に合わせたパッキングキットと、道中や目的地での使用に最適なバッグを組み合わせました」(名倉氏)
例えば「ショートトリップキット」(3万6300円)は、1泊2日~2泊3日に適し、「ポーチ(L)、ポーチ(S)、メッシュ巾着、ナイロン巾着」の4つがセットになっている。
「POTR/PACKSの「ショートトリップキット」は4点セットだ(写真提供:吉田カバン)「ポーチのマチ幅が拡張できるエクスパンダブル機能で、宿泊数に応じて利用できます。使い方はお好みですが、メッシュ巾着は旅先のちょっとした外出にも使え、ナイロン巾着は着た後の衣類を入れることも可能。メイン素材は撥水・防汚効果のある素材ですから急な雨にも対応できます」(同)
消費者に「どんな機能がバッグにあったらうれしいか?」を聞いたところ、「見た目がダサくならずにサイズを変えられるバッグがほしい」(30代男性)、「サイズが変えられるバッグ。サイズごとにバッグを持っていると家での収納場所に困る」(20代女性)という声もあった。こうした声にも応えられそうな商品だ。
20代女性の声を伝えたところ、名倉氏が「女性の出張時には、このタイプも人気です」と紹介してくれたのが、POTR/PACKSの「グルーミングポーチ&トレイ」(2万900円)だ。
「内装に2つのメッシュポケットを備え、ヘアワックスや化粧品など旅行に携行する美容小物を収納できます。ハンドルはスナップボタンで取り外しができ、開いた状態のままホテルの部屋のフックにかけられます。トレイは、ホテルの部屋でアクセサリーや身の回り品をまとめて置く時にも使えます」(名倉氏)
疲れてホテルの部屋に戻り、ネックレスやイヤリング、時計などを外すと、どこに置いたかわからなくなる時があるかもしれない。そうした際の“受け皿”にもなりそうだ。
「グルーミングポーチ&トレイ」のトレイ部分(写真提供:吉田カバン)どんどん入れられるトートバッグも人気
リュック派が多い時代だが、トート派もいる。
「トートバッグとしては、POTR/SCOPEの『アーバントート』(5万8300円)が支持されています。本体は高さもあって大きく開けられ、大容量で16インチのPCが入ります。2台入れる場合にも対応できます。また、外装側面のファスナーポケットは内側の収納部が広がるので、靴や着替えも入れられます。仕事終わりにジムに行くような人にも便利です」(同)
さまざまな荷物が入れられる「アーバントート」(筆者撮影)「手持ち部分が短めのバッグだと冬にコートなどを着た時に持ちづらくなってしまう」(20代女性)という声も聞いたが、このトートバッグなら対応できそうだ。
ところで近年、さまざまな商品の価格が上がっている。原材料や物流費も高騰するなど鞄業界にも影響がある中、吉田カバンの見解を聞いた。
「1935年の創業以来、日本製にこだわってバッグをつくり続けています。創業者の吉田吉蔵(きちぞう)の『絶対に日本の職人を絶やさない』という思いを受け継ぎ、来年で創業90年を迎えますが、日本の職人やモノづくりを守っています」
人件費が安い国の工場での大量生産ではなく、国内の職人が携わり、製作工程には手作業も多い。同社のバッグは丈夫だが、壊れたら修理にも応じており、そうした時も各職人が担当する。
新しく買ったバッグも、経年変化したバッグも使う人の人生と共に生きる(生きた)存在だ。時には愛用の仕事バッグと向き合ってはいかがだろう。
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