サバやサンマなどの魚介類の体内に潜み、生きたまま人の体の中に入ると激しい痛みを引き起こす寄生虫・アニサキス。食中毒の要因の5割近くを占めるほど深刻化している。防止には目視による除去が一般的だが、人工知能(AI)を活用して検知する手法が登場した。
そもそも、アニサキスとは
魚に寄生しているアニサキスは幼虫で、長さ2~3センチぐらいの白っぽい糸状。魚を生で食べて生きたアニサキスが体内に入ると、胃や腸の粘膜に刺さり、数時間から数日で激しい痛みや嘔吐(おうと)などの症状を引き起こす。厚生労働省などは加熱するか、氷点下20度で24時間以上冷凍するよう勧めている。
目視で取り除こうとしても完全には難しい。厚労省の統計によると、アニサキスによる食中毒は届け出があっただけで2023年に432件あり、10年前と比べて約5倍に。22年には566件に達した。
輸送技術の向上により、全国の魚を冷凍しないまま味わえるようになり、生きたアニサキスを口にするケースも増えたと考えられている。
画像数枚を学習すればベテラン検査員並みに
そこで開発されたのがAIにアニサキスを検知させる技術だ。形状や大きさが異なったり、微細だったりすると目視では難しかったが、AIにアニサキスが付着している生魚の画像数枚を学習させると、ベテラン検査員のノウハウを身に付けられるという。
人とは異なり、経験による精度のばらつきもない。画面にアニサキスが潜む部分が目立つよう表示され、人の手で取り除く。
システムはMENOU(東京都中央区)、アプライド(福岡市)、アイエムパック(札幌市)が協力して開発。北海道根室市で海産物販売を手がけるカネコメ高岡商店で12月から稼働する予定だ。
カネコメ高岡商店の高岡義政専務は「手作業による検査には非常に神経を使い、業務効率化や人材不足の課題も抱えている。将来的には検査ラインの自動化を目指し、今まで以上に安心・安全な商品を提供したい」と期待する。【嶋田夕子】
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