梅と小言、後にしょっぱくしみてくる

 梅が各地で不作だ。温暖化の影響か。千葉県匝瑳(そうさ)市でも生育が悪い。だが、例年通りに採れる木もある。種(しゅ)が滅びないための多様性。違いによって全滅が回避される。折しも、この5年で平均気温が産業革命前より1・5度上回りかねないとのニュースがあった。そうなれば、豪雨や熱波、干ばつ被害が深刻化。気温上昇が加速し、後戻りできないという。ヒトを含め、どれだけの種が生き延びられるか。わが家の小さな2本の梅の木は、片方だけわずかに実が熟したが、梅干し作りには物足りない。そこで、梅の木がある地元の方に連絡すると、快く「採りにきな~」。地球温暖化はごめんだが、心が温まるのはありがたい。  先日、こんなことを聞かれた。「移住先で人間関係に苦労しませんか? 心配です」。私は15年前、東京から米作りのため、匝瑳市の里山に通い始めた。そんな人が増え、自分も含めて二拠点居住や移住する人も。周りからは「オウム真理教では?」「モンペ姿の人がいる。われわれはとっくに穿(は)いていないのに、ばかにしてるのか!」「変な人に来られては困る」といった声もあったらしい。  だが、私は気にしなかった。怪しい宗教でないことはいずれわかる。モンペは農作業に重宝するから再評価されると信じていたし、変な人だと決めつける人こそ時代遅れ。ヨソ者を排除する地域は廃れる。ヒトも多様性でよし。交流が増すほど理解者が増え、うわさや勘違いは減った。  どんな組織にも面倒な人は必ずいる。会社に勤めると、その極め付きだ。上司や先輩が厄介だと、多様なハラスメントにさらされる。給料が人質に取られ、命令には服従。耐え難い。異動や転職の度にヒヤヒヤだ。田舎で移住者にしょっぱい小言を言う人はいるが、その後「ナスが採れすぎたから、持ってけ」と段ボールいっぱいくれることも。会社だと上司が理不尽に怒鳴った後、「野菜を持ってけ!」なんてことは、まずない(笑)。会社勤めの人間関係に比べれば、移住先のそれは機知に富んでいて、何のその。心配ご無用、温暖化抑止のためにも、ローカルへいらっしゃ~い。 <(高坂勝(こうさかまさる) 脱「経済成長」、環境、幸せの融合をローカルから実践。53歳)>


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