広島県在住のシンガー・ソングライター、TOKI(本名・清水十輝)さん(30)が学校生活に悩む子どもたちの声を代弁した曲「学校には行きたくなくなった」が共感を呼んでいる。クラウドファンディングでミュージックビデオ(MV)の制作費などを募り、不登校の当事者らが協力した一曲。TOKIさんは「人生の選択肢はいくつもあり、自分で選んでいい」と教育現場などで講演しながら、曲に乗せて思いを伝える。
「文字を読むのが嫌いなんじゃない 空気読めって空気が嫌いなんだ」「仲間が出来ないんじゃない 仲間外れを作る風習が嫌いなんだ」。
約4分半の曲では、シンプルなギターのメロディーに乗せて曲の主人公の「俺」が、なぜ学校に行きたくなくなったのか思いを吐き出す。サビでは「学校には行きたくなくなった」と繰り返す。
「ここ以外の選択肢は無いんだと 断言されると胸が詰まるんだ」「俺はただ俺を生きていたい」
TOKIさん自身は両親の教育方針で、小学校に上がる頃から家庭で学ぶホームスクールで育った。同じ理念を持つ複数の家族と共同生活を送り、17歳で高卒認定を得てからは、ギター片手に国内外を旅してきた。
自身も親になり、2021年初夏、「『学校に行きたくない』と口にすることすら許されない空気が社会にあるように感じて」一気に曲を書き上げた。
クラウドファンディングでMVの制作費や出演者を募ると、10~20代の不登校や引きこもりの当事者ら約10人が全国から集まり、顔を出して出演した。全身を使い「学校には行きたくなくなった」と社会に訴えるように歌うリアルな若者の姿が収められた。
22年1月にMVを動画投稿サイトで発表すると、「今日寝られる」と感謝の書き込みが相次ぎ、全国各地の不登校の親子らの集まりに呼ばれるようになった。今年4月に宮崎県日向市のフリースクールで開かれたトーク&ライブには県内の不登校中の小学生らも参加した。
高知県宿毛市のNPO法人「じんけんネットすくも」は23年10月~11月、主催する人権啓発講演会の講師に招き、TOKIさんは市内小中学校3校で全校生徒や職員を前に曲を熱唱した。
TOKIさんは講演で「学校に行かなくていい」という学校否定ではないと説明し、思いをこう伝える。「あなたの隣にいる子が明日、学校に来なくなるかもしれない。行きたくない気持ちがある子の存在を認め、寄り添ってほしい」。【塩月由香】
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