「配偶者と同じお墓は嫌」
「婚家(こんか)の墓には一緒に入りたくない」
日ごろからそう思っていたとしても、具体的にどうすればいいのだろうか。
葬儀・お墓コンサルタントの吉川(きっかわ)美津子さんに、どのような選択肢があり、どんな準備が必要か尋ねた。
女性の3人に1人が「嫌」
来店型保険ショップ「保険クリニック」が2017年に40~60歳の600人にウェブアンケートで調査したところ、「配偶者と同じお墓に入りたくない」と回答した人は男性は14・7%だった一方、女性は32・7%にのぼった。女性は3人に1人が「入りたくない」と回答したことになる。
入りたくない理由として、女性からは「死んでまで同居したくないから」「実家のお墓に入りたいから」、男性からは「お墓はいらないから」「相手が嫌がっているから」などの回答があった。
吉川さんは「家族関係の変化や、供養の方法が多様化し『同じお墓に入らない』ことが選べるようになったことが背景にあるのではないでしょうか」と分析する。
家族と理由の共有を
配偶者と同じ墓に入らない場合、どんな選択肢があるのだろうか。
吉川さんは現実的な方法として、永代管理(寺院の場合は宗教儀礼を含む永代供養)の墓を挙げる。お墓を受け継ぐ人がいなくても、永代管理料を支払うことで、管理者が長年にわたって遺骨を管理してくれるシステムだ。管理の方法はさまざまで、最初から他の遺骨と合葬する施設や、一定期間を過ぎると合葬する施設がある。法要も個別と合同があり、寺院によって異なる。
樹木葬、納骨堂は永代管理(供養)付きが多い。海洋散骨を選ぶ人もいる。自分の実家の墓に入ることも、承継者の許可を得れば可能だ。
吉川さんによると、費用は▽樹木葬=1区画5万~300万円▽納骨堂=1区画数十万~150万円▽海洋散骨=1柱5万~30万円。それぞれ、合葬タイプなら割安、個別タイプなら割高になるという。
選ぶ時の注意点については「自分は『散骨がいい』と思っていても、残される人の思いは違う場合もあります。自分がなぜそれを選んだのか、残される家族と共有しておくことが大切です」と話す。
納骨時に「折衷案」も
墓などの見学をする場合は、家族も一緒に行き、墓参りがしやすい場所か確認し、話し合ってから決めることを勧める。どうしてもお墓を別にしたいなら、自分で契約、支払いまで済ませておくのが望ましいという。
自分が死んだ時に、選んだ供養の方法が実行されるかどうかは、残された家族に任せるしかない。吉川さんは「遺言で『祭祀(さいし)主宰者』を指定できるので、指定した人によく伝えておきましょう」とアドバイスする。
配偶者と別の墓を用意した場合、残された家族は墓参りを2カ所しなければならない場合もある。吉川さんは「残される家族がいる場合は、家族の負担も含めて考えてみましょう」と呼びかける。
吉川さんは、相談を寄せられた際に「折衷案」を提案すると、最終的に「一緒でもいいか」と考えるようになる人が多いという。
折衷案には、納骨の時に夫や妻の骨つぼと距離を離して入れたり、骨つぼを使わない地域では納骨袋に遺骨を入れて他の遺骨と接しないようにしたりする方法があるという。
きっかわ・みつこ
大学卒業後、ツアーコンダクターを経て、旅行情報誌、旅行業界誌の取材・執筆に携わる。1990年代半ばに葬儀業界へ転身し、大手葬儀社、仏壇・墓石販売店に勤務。現在は人材育成や情報発信、コンサルティング業務、講演講師などを軸に活動している。【御園生枝里】
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