“6月地獄”

1年のうち祝日がない月は2つあります。

それは6月と12月。

12月には冬休みがあるけれど、6月は毎日仕事。

“6月地獄”

ネット上ではそんなことばも見られます。

大阪の街でも聞いてみました。

高校生
「学校が毎日あるのしんどい」

50代女性
「ずっと仕事、しんどい」

きつい、つらい、休みたい。

次々とそんな声が上がりました。

中には、こんな声も。

子ども3人を連れた母親
「休まずに、学校行ってくれる方がいいなって思います」

60代男性
「定年退職してるから。ずっと祝日なんで関係ないわ(笑)」

受け止め方は様々のようです。

でも、なんで6月には祝日がないの?

調べてみると、実は6月にも祝日があったかもしれないことが分かりました。

幻に終わった「6月の山の日」

その祝日とは「山の日」。

8月11日ですよね。祝日法の改正によって、2016年から祝日となりました。

この「山の日」が、6月になっていたのかもしれないんです。

お話をうかがったのは「全国山の日協議会」の佐藤帯刀さん。

法改正をめぐる当時の議論の記録を見せてくれました。

たしかに6月上旬案が有力とあります。

多くの地域で山開きが行われる6月を推す声があったのです。

それがなぜ、8月になったんでしょう?

全国山の日協議会 佐藤帯刀さん
「新しい祝日を作ることによって様々な影響が考えられます。特に雇用とか労働への影響をどうすれば小さくできるかが考慮の対象になっていました」

一部の企業から生産性の低下を懸念する声が上がっていたということです。

さらに、諸外国に比べて日本は祝日が多いという指摘もありました。

日本の祝日は16日、振替休日を含むと2024年は21日となります。

JETRO(日本貿易振興機構)のまとめによると、世界各国の祝祭日は10日前後が多くなっています。

山の日制定をめぐる議論では、お盆の時期が近い8月であれば経済活動への影響が少ないと考えられたということです。

全国山の日協議会 佐藤帯刀さん
「お盆の前であれば、皆さん連休をとっている可能性が高いです。その1日前に付け加えるのであれば比較的影響は少ないだろうということで、お盆の前の8月11日に決まりました」

6月の山の日は、幻に終わりました。

最有力候補!?「時の記念日」

ならば、別の記念日を6月の祝日に。

その活動を続けているのが、兵庫県にある明石市立天文科学館です。

推しているのは6月10日の「時の記念日」。

天文科学館には日本の時刻の基準となる東経135度の子午線が通っています。

6月10日に子午線を越えた人に配る通過証でも、「時の記念日を祝日に」とPRしています。

「時の記念日」は1920年に当時の文部省の外郭団体によって定められました。

1300年あまり前、現在の大津市で天智天皇が時を計り、人々に知らせた日とされています。

使われたのは、流れた水の量で時間を把握する「漏刻(ろうこく)」と呼ばれる水時計。

天智天皇をまつる近江神宮では、毎年神事が行われています。

由緒ある「時の記念日」を祝日に。

天文科学館はそう意気込んでいます。

明石市立天文科学館 井上毅 館長
「時に関係する者にとっては1年でいちばん大事な日です。6月は祝日がありませんから、名乗りをあげるのに最もふさわしい日だと思います」

県民だけの休み?

さらに取材を進めると、6月に県民独自の休日がある県が。

それは、千葉県。

6月15日を「千葉県民の日」と定めています。

1873年6月15日に当時の木更津県、印旛県の両県が合併して千葉県が誕生したことに由来しています。

県の人口が500万人を越えたことを記念して、1984年に制定されました。

学校などが休みになります。

うらやましい…。

そんな「千葉県民の日」の思い出について、千葉県出身の2人に聞きました。

NHK大阪放送局の吉田浩アナと秋鹿真人アナです。

(吉田)「いやー、うれしかったね。1年に1度、『千葉県民でよかった』と。夏休みまであと1か月くらいのときに休みというのは大きかった」

(秋鹿)「そこにポコンと休みがあってありがたかった。1日休めるって」

(吉田)「そうだよね」

「千葉県民の日」が制定されたとき、2人は小学生。

吉田アナは5年生、秋鹿アナは3年生でした。

当時の思い出は?

(秋鹿)「覚えてます?」

(吉田)「覚えてる、覚えてる。なんでかっていうと、その前の年にテーマパークができたんですよ」

(秋鹿)「浦安のね」

(吉田)「毎年、県民の日にはあそこにいこうと。平日はやっぱ空いているからね」

制定されたばかりの県民の日。

たくさんの千葉の子供たちがテーマパークに出かけていったそうです。

吉田アナもその1人。

平日に遊ぶことの特別感でワクワクしたそうです。

一方、同じ千葉県でも県東部で育った秋鹿アナの思い出はちょっと違うようです。

(秋鹿)「ちょっと遠い距離だったので。『いいなあ、都会の子たちは“夢の国”で遊んでいるんだろうなあ』って思いながら近所の田んぼで遊んでました。リアルネズミとか、リアル野良犬を追っかけ回して」

千葉県民だけの6月の貴重な休み。たくさんの思い出が詰まっていました。

祝日のない月だからこそ

海外では有給休暇の取得率が90%を越えている国も珍しくありません。

日本より祝日が少なくても、自分に合わせて休みを取っています。

厚生労働省によると、日本の有給休暇取得率は高まってはいるものの62.1%(2022年)です。

一斉に休む祝日がないからこそ、働き方と健康を見つめ直す。

そんなことを考える月にしてもいいのかもしれません。

(6月19日「ほっと関西」で放送)

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