「夏季うつ」をご存じだろうか。夏の暑い時期、食欲不振や不眠といった夏バテとよく似た体の不調に加え、「何をするにもやる気が出ない」「気分が優れない」といった精神的な不調も伴う。心の健康支援事業を手がけるアドバンテッジリスクマネジメントに、対策について聞いた。
夏季うつは医学的な診断名ではなく、6~9月に不調が表れる季節性感情障害の一種。同様の不調が冬に出ると「冬季うつ」と呼ばれる。原因ははっきりしていないが、春先から少しずつたまる「疲労」の影響が大きいと考えられている。
疲れは、進学や就職など生活環境が大きく変わる3~4月から少しずつ蓄積される。5月の大型連休で解消できないと、梅雨に入る6月ごろから心身に不調をきたすようになるという。
予防するには、疲れをため込まない▽日差しを浴び過ぎない▽良質な食事と睡眠を取ること――が挙げられる。
日光浴は自律神経を整えるのに効果的とされるが、浴び過ぎは禁物。夏の強い日差しは体の負担になり、疲労感が蓄積されるため、気温が高い時期は長時間の外出は避けた方がよい。室内も温度が高いと、体のだるさやストレスを感じやすくなるため、体調に合わせた快適な室温設定が大切になるという。
食事は、自律神経や精神状態に作用する脳内の「セロトニン」がカギとなる。別名「幸せホルモン」と呼ばれ、たんぱく質の一種「トリプトファン」から合成されるため、肉や魚、乳製品や大豆製品の摂取が推奨されている。夏は枝豆や豚しゃぶといったメニューで、セロトニンの分泌を増やせそうだ。
睡眠については近年、質や量が問題視されている。厚生労働省が今年2月に発表した「健康づくりのための睡眠ガイド」によると、推奨する睡眠時間は成人で6時間以上、小学生は9~12時間、中高生は8~10時間となっている。アドバンテッジリスクマネジメントは、就寝前のスマートフォン使用やカフェイン摂取を避ける▽冷感性・通気性のある寝具を使う――など、睡眠環境を整えることを助言している。
カウンセリングなども手がける同社の担当者は、「冬はうつ症状の相談件数が増えるが、夏バテと混同して夏場は気づかないケースも考えられる」と懸念する。「夏バテとは対処法も異なる。夏季うつの症状に当てはまるようなら、医療機関への相談と十分な休養を取ることが大切」と話している。【嶋田夕子】
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