JA富里市の直売所「旬菜館」で自慢のスイカを手にする根本実組合長=千葉県富里市で2024年6月10日午後3時18分、合田月美撮影
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 スイカの産地として名高い千葉県富里市では、約200人の農家とJA富里市が一丸となり、徹底した品質管理で「富里スイカ」のブランドを築き上げてきた。出荷が最盛期を迎える中、「味がいい」「外れがない」と高い評価を集めるわけを、同JAの根本実組合長(67)に聞いた。【合田月美】

 ――そもそも、なぜ富里はスイカ栽培が盛んなのですか。

 ◆大正時代に栽培されたのが最初で、その後、村長が旗を振って栽培と共同出荷を推奨する一方、県が富里のような火山灰土台地に適した品種を開発したことで栽培が広がりました。1935年には富里村西瓜(すいか)栽培組合が発足。栽培方法の統一化と検査、出荷の共同化に取り組み、市場で新産地としての名声を博していきました。決して肥沃(ひよく)な土壌ではないが、内陸にあって昼と夜の寒暖差が大きいところも甘いスイカを育てるのに向いていたようです。

 ――栽培の準備はいつ始まるのですか。

 ◆種をまいて苗を作る作業は前年の12月です。年が明けて2月に苗を植え、花が咲くと、ミツバチで交配させます。苗からはたくさんの枝が伸びますが、4本だけを残して他は切り落とします。やがて、それぞれの枝に実がつきますが、養分を集めておいしいスイカにするため、卵くらいの大きさになったら摘果して最終的に育てるのは1株からせいぜい2個。実が大きくなる時期は梅雨とも重なり、暑い日は畑の温度が50度近くになることもあります。トンネル状に覆ったシートを開け閉めして温度調節しなければならないため、農家はこの時期、外出もままなりません。

トンネル内の温度調節のため、この時期は気軽に出かけられないと話すスイカ農家の柳田政雄さん=千葉県富里市で2024年6月10日午後3時45分、合田月美撮影
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 ――どんなところにこだわっているのですか。

 ◆一番重視しているのは食味と食感です。5月に収穫するハウスものから、6~7月に取るトンネル栽培まで、ここ数年の気候変動にも対応しながらその時期に最も適した品種を選定して栽培していますが、食味と食感のため、全てのスイカの「戸籍」を作って、交配の日から収穫まで厳格に管理をしています。交配した日から毎日の平均温度を足した「積算温度」が1000度になる50日前後が収穫の目安です。完熟した一番いい状態で食べてもらうため、積算温度をクリアしたものをさらに試し切りして糖度を調べ、11度以上のものだけを収穫する、というルールを富里では生産者全員で守っています。糖度は実際にはほとんどが12度以上です。

 ――おいしいスイカの見分け方を教えてください。

 ◆へたの部分がへこんで、その周りの肩の部分が盛り上がっている。なおかつ、皮の黒いしまの部分がでこぼこしているのが一番うまい。たたいてみて鈍い音だと空洞があるということでCランクになってしまうんですが、実はその方が甘くてうまい。自分で食べるならそちらがお勧め。これから、黒皮で種が少なくシャキッとした食感の「プレミアムブラック」、糖度が高いものでは16度にもなる黄色い「金色羅皇(こんじきらおう)」、そして昨年、新名称が決まった「富里秋スイカ」と、10月まで収穫が続きます。最近はカットスイカを買う人が多いようですが、ぜひ丸ごと買って食べてみてください。

JA富里市の直売所「旬菜館」でスイカの出来に太鼓判を押す根本実組合長(右)=千葉県富里市で2024年6月10日午後3時21分、合田月美撮影
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ねもと・みのる

 農業の傍ら種苗会社や水産仲卸会社での勤務経験も。2003年、全国最年少の45歳でJA富里市の組合長になった。全国落花生協会理事長として落花生の生産拡大にも取り組む。

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