高校生が放課後に校内で地域の人らと交流する「校内居場所カフェ」で、千葉県から委託費が支給される期間の上限が2年となっていることに運営団体が戸惑っている。2年を経過し、委託費を受け取れなくなった団体の関係者は「資金が足りず、これまでと同じ形で運営できない」などと悲鳴を上げる。【長沼辰哉】
県立生浜(おいはま)高(千葉市中央区)で同カフェを運営する「いちはら福祉ネット」(市原市)は2021年度に活動を開始した。カフェではフードバンクから寄せられたお菓子や飲み物を無料で配布してきた。しかし、最近はフードロスへの意識が高まり、フードバンクに集まる食品が減った上、県内の同カフェが増えたため、足りない分は購入している。また、カフェに長く居てほしいとの思いから、韓国のお菓子「ホットク」約300個を毎回振る舞っている。こうした食料の購入費用は1回につき6万~8万円かかるという。
同団体の運営スタッフ、石橋正治さん(61)は「新型コロナウイルスの5類移行でカフェでの飲食が解禁され、(多くの生徒が集まり)軌道に乗ってきたところだった」と説明する。だが、同団体への委託(22年度開始)は2年を経過し、24年度から委託費を受け取れなくなった。資金不足で前年度と同様の運営を断念し、経費を安く抑えられる代替策を模索している。石橋さんは「途方に暮れている。行政が何らかの形で助けてほしい」と願う。
県立市川工業高(市川市)で校内居場所カフェを運営する「くらっち」(浦安市)も同様に今年度は委託費が受け取れない。スタッフの小原繁久さん(42)は「これまで以上にお金の使い道を慎重に判断して運営していく」と話す。
県健康福祉指導課などによると、県内の同カフェはNPO法人などが21年度に初めて実施。22年度からは県が事業化し、運営を福祉団体などに委託している。県が22年度に5校で委託を実施すると、他の県立高からも要望があり、23年度は新たに5校、24年度はさらに3校増えた。県は元々、委託期間の上限を2年としていたため、3年目の団体は自力で運営しなくてはならない。
同課の担当者は「県として何か手伝えることはないか検討している。引き続きバックアップしていきたい」としているが、25年度以降の同カフェ事業の予算は未定という。
同カフェを運営するNPO法人「ハイティーンズサポートちば」(千葉市中央区)の吉永馨理事長(70)は「福祉と教育が一体となり、進めていくことが必要。県は途絶えることなく予算を拠出してほしい」と訴える。
「命をつないでくれた場所」 気軽に相談でき飲食も
「相談をするために来るような敷居の高い場所にしたくない。もっと、気軽に来てもらえたら」。校内居場所カフェを運営するスタッフに話を聞くと、そう口をそろえる。同カフェをきっかけに、家庭や生活の悩み事を打ち明け、その後の生活の支えになったという生徒も少なくない。
「学校の教室とは違う。来るたびに安心できる。自分にとっては命をつないでくれた場所」。公立定時制高校に通う3年の男子生徒(17)は話す。入学して間もないころ、ホームルームで担任から同カフェのことを聞き、初めて知った。授業が終わり、カフェが実施されている食堂に行くと、お菓子やジュースが積まれていた。経済的な理由で毎日3食の食事ができない男子生徒はお菓子やジュースを持ち帰る。
何度か行くと、知り合いになったスタッフが名字に「君」付けで呼んでくれるようになった。食べ物をもらい、知り合った大人とたわいもない話をした。気が付くとカフェが楽しみで学校に行くようになっていた。
男子生徒は家庭の事情で自宅で1人で生活した時もあったが、そういった事情もカフェで相談した。一時は「どうすればいいか分からない」と不安だったが、今は伸び伸びとしている。
男子生徒は穏やかな表情で「校内にあって楽しい話や悩み事まで何でも話せるところ。どんなことをしてもいいような緩い雰囲気も好き。いろいろな人と話せる場が(他の学校にも)広まってほしい」と話す。
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