2019年に統合・再編の合意をした静岡大学と浜松医科大学ですが、現状は静岡大学側が基本合意とは異なる案を正式に決定するなどしたため、両者の統合・再編は暗礁に乗り上げた形となっています。

こうした中、静岡大学の前学長が7月1日に記者会見を開きました。

前学長が記者会見を開き苦言

静岡大学・石井潔 前学長:
数の力を借りた多数者の横暴というのが非常にはっきりした3年間だろうと考えています

2024年7月1日、静岡県庁で会見を開き、強い言葉で静岡大学を非難したのは石井潔 前学長です。静岡大学と浜松医科大学の再編を巡る今の静岡大学側の動きに大きな疑問を投げかけました。

静岡大学・石井潔 学長(2019年):
両方の大学の独立的な運営で小回りの利く迅速な意思決定と活動ができる

浜松医科大学・今野弘之 学長(2019年):
想像できないような分野が開拓される

静岡大学と浜松医科大学が統合・再編に合意したのは5年前の2019年。

1つの法人が2つの大学の経営を担う「1法人2大学」という再編案で、2021年度までに統合を完了し、2022年度には新大学の学生の募集をすることを目標に掲げていました。 

合意当時から静大側には慎重論が

しかし…

静岡大学 人文社会科学部
田島慶吾 副学部長(当時):
大学を2つにわける重大な決定を1年の間にするのはあまりにも拙速

この合意の2日前、静岡大学の教員や職員約280人が反対を表明。

工学部がある浜松キャンパスが浜松医大に移ると静岡大学の規模が小さくなり、質の高い学生や研究者が集まらなくなると訴えました。

静大工学部と浜松医大が連携することで最先端の医学分野を確立できるなど、静大・浜松キャンパスと浜松医大のメリットが上がる一方でなかなか見えない静大・静岡キャンパスのメリット。

こうした中、2020年に行われた静岡大学の学長選考で選任されたのは再編に慎重派の日詰一幸 学長でした。

静岡大学・日詰一幸 学長:
最も望ましい方向性を教職員の皆さまと一緒に考え、その方向性を決めていく。非常にいばらの道、非常に厳しい道だと思っておりますが、あえてそれを私自身が担わなければいけない

合意と異なる「1大学2校」を正式案に

再編に慎重な姿勢を見せる静岡大学側。

両者が歩み寄ることはなく、2021年1月、両大学は計画の延期を発表しました。

そして2022年7月、日詰学長が浜松医大との協議の中で1法人1大学とする私案を示します。

静岡大学・日詰一幸 学長:
真に競争力のある大学をつくっていくためには両大学が将来的には1つになって、つまり両大学が統合されて1つの大きな大学になることが必要ではないか

さらに2つの大学を統合し、静岡と浜松に2つの分校を置く「1大学2校」案を発表し、静岡大学はこの案を大学としての正式な案に決めました。

「1大学2校」案を正式な案に決めた静岡大学。

合意書通り「1法人2大学」への再編を求める浜医と静大・浜松キャンパス。

静岡側と浜松側の溝は深まり、先が見通せない状況が続いています。

前学長が静大側の動きに不信感

こうした状況下で、7月1日に記者会見を開いた石井前学長。学長退任後にこの問題についてメディアの前で話をするのは初めてです。

その理由は、静岡大学の経営に関する重要事項を審議する協議会の議事録で「合意に至ったプロセスの検証」をする動きがあったためだと語りました。

静岡大学・石井潔 前学長:
合意書そのものは有効という立場を取られてきたのに、合意書の決定プロセスを検証するということは合意書そのものが正当性がないという結論を出そうとしてるのでは、それはおかしいというのがきょう会見を開いた一番大きな理由です。

あくまでも最終的判断は大学の現役の方が判断することなので、私が口をさしはさむつもりはないが、自分たちの失敗を前任者に押し付けないでほしい

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