宮城県栗原市教育委員会が4日、市立中学校の25メートルプールで水を31時間出しっ放しにするミスがあったと発表した。プールに注水を始めた教員がそのまま止め忘れるなどの事案は、6月以降、少なくとも5件発覚している。気付くのが遅れることで損害額が膨らみ、高額な賠償が発生するケースもある。再発を防ぐ有効な手立てはないのだろうか。
繰り返されるミス
栗原市教委によると、市立志波姫中で6月28日、プールの授業前に教員が水位と水温を調節するために水を入れたが、授業終了後も水を止め忘れた。市職員が29日、地区の水道使用量が多いことに気付いたことで発覚した。損害額は推計約41万円だが、故意ではないため、教員らに弁済は求めないという。
大阪市東住吉区の市立矢田北小でも6月28日、プールの水位が低かったことから教員が注水を始めたものの、そのまま止め忘れ、7月1日に思い出した教員が学校に出向き停止させた。市教委によると、注水作業中は職員室にあるホワイトボードにその旨を記入し、他の職員に周知することになっていたが記入することも忘れていたという。流出した水量や損害額を調査した上で今後の対応を検討する。
一方、石川県小松市では、市立芦城小が6月のプール開きに合わせて5月29日に給水を開始したが、2カ所の排水バルブが開いたまま給水を続けていた。6月11日の水道使用量の定期検針の際に、使用量が大幅に増加していることでようやく気付いた。
13日間の流出量は25メートルプール約25杯分に及び、市が見込む損害額は約300万円にも上る。対応を協議するという。
東京都江戸川区でも6月、区立東葛西小と区立南小岩第二小で注水の止め忘れが相次いだ。区教委によると、いずれも注水を始めた教員が止め忘れ、計約760立方メートルが流出。損害額は計約51万円を見込んでいる。
江戸川区のいずれの学校も校長が自主的に損害額を負担することを申し出ているという。
区教委は、対策として▽タイマーの設定▽複数人での作業▽掲示などを通じての教員や管理職への報告▽情報共有の徹底ーーを挙げ、「注水が終わるまでプールにいるのは非現実的。そして1人でやっているとどうしても忘れてしまうこともある。これらをやるしかない」と説明した。
広がる民間委託
一方、学校のプールの老朽化を背景に、水泳の授業を民間業者に委託する取り組みも広がっている。なかにはプールの管理業務を委託するケースもあるという。
京都市では今年度から、市内の小・中学校計4校が近隣のスイミングスクールなどで水泳の授業を実施している。市教委の担当者は「民間施設を利用することで水質や水量などの管理も必要なくなるため教員の働き方改革にもつながっている」と話す。
スポーツクラブを運営するルネサンス(東京都)は、2020年度から本格的に学校の水泳授業の受託を始めた。受託数は初年度は2校のみだったが、23年度になると首都圏の小学校を中心に約50校に増え、今年度は60校を超えた。
同社の担当者は「水泳授業では泳法の指導だけでなく、監視のために人手も必要です。現場の先生からは水質や水量などの管理、清掃業務も大きな負担になっていると聞きます」と話し、今後も受託増を見込む。店舗の施設を使った授業委託を受けるケースが多いが、水質などのプール管理業務のみを請け負っている学校もあるという。
過去に多額の損害 川崎市では
川崎市の市立稲田小では昨年5月、教員が注水作業の操作を誤り、プール約6杯分の水を流出。市側が教員と校長に損害額の半額にあたる約95万円を請求したことから耳目を集めた。
市教委は再発防止対策として、安全管理マニュアルの改定や教職員を対象にした研修などに取り組んできた。
注水などの管理を民間業者に委託できないかも検討したが、学校ごとに設備の種類や状況が違うため業者を探すのは難しいと断念したという。市教委は「正しい操作方法の習得や複数職員での対応、管理職との情報共有を徹底するしかない」としている。【宮川佐知子】
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