ぼーちゃんとは〝別の職場の同僚〟でオオサンショウウオを育む豊かな自然をPRしている弥助=三重県名張市役所で、久木田照子撮影

 三重県名張市のイベントなどに“出張展示”されて親しまれてきた交雑種のオオサンショウウオ「ぼーちゃん」が死んだことが3日、確認された。同市安部田の市郷土資料館が2階の水槽で飼育、公開していた。2017年に同館館長に“就任”した個体と思いきや、実は4代目。名張ゆかりの忍者の当主のように、代々、襲名されてきたぼーちゃん。今後は5代目が来館者を迎えて、オオサンショウウオの生態を紹介する。

 名張市は国特別天然記念物の在来種のオオサンショウウオの生息地。数十年前には中国原産のチュウゴクオオサンショウウオが食用などで輸入され、野生化して在来種と交雑が進んだとみられる。市などは専門家らの協力で調査を実施。DNA鑑定で交雑種と判明した約150匹を元小学校の同館プールに隔離している。共食いなどを防ぐため、小柄な個体は室内の水槽などで飼っている。

 市との縁が深い貴重な生物に親しんでもらおうと、市は2016年に初代ぼーちゃんを選び、室内で公開。17年に資料館の“館長”の辞令を交付した。初代の命名理由は「おとなしく、ぼーっとした性格」から。イベントや学校への出張で、人々と触れ合える穏やかさが適任とされた。その後は、ぼーちゃんを襲名した個体が命を全うするたびに、人知れず代替わりさせてきた。

 近年は、コロナ禍の影響もあり、“出張”はほとんどなかった。資料館によると、4代目はこの約1カ月間は食欲が落ち、衰えた様子だった。職員が3日に死んでいるのを確認し、5代目への引き継ぎを進めている。

 環境省は外来種とその交雑種のオオサンショウウオを特定外来生物に指定し、1日から輸入や放出などが禁じられた。名張市はプールや水槽に隔離する交雑種を今後も飼う方針で、ぼーちゃんや、市役所で“秘書”に就任した「弥助」などは水槽からの逃亡防止策を強化して公開を続ける。【久木田照子】

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