お年寄りは熱中症にかかりやすいとされ、総務省消防庁によりますと、ことし4月末から6月までに全国で熱中症で搬送された人のうち、半数余りの57.5%に上ります。

熱中症を防ぐために、こまめな水分の補給が必要ですが、東京医科歯科大学の戸原玄教授は、年をとるにつれて、のどの渇きを感じにくくなり摂取のタイミングが遅れるほかに、飲み込む際に気管に入ってむせることを嫌い、水分を取るのを避けるケースもあると指摘しています。

戸原教授によりますと、口の中に入れたものを飲み込む際、誤って気管に入らないようのどの奥にある「喉頭蓋」が気管の入り口をふさぐ役割をしますが、お年寄りはこの働きが低下するということです。

特に水やお茶は、固形物に比べて喉を通るスピードが速いためタイミングが間に合わず、気管に入ってむせたり、肺に入って悪化した場合は誤えん性の肺炎になったりすることもあり、水分を取る支障になっているとしています。

このため戸原教授は、とろみ剤を使うことで誤って気管に入るリスクを減らしながら、熱中症対策が取れるとしています。

とろみ剤は、片栗粉やゼラチンのように熱しなくても、水やお茶と混ぜるだけでとろみをつけることができる食品で、大型のドラッグストアやインターネットで販売されています。

トマトジュースくらいのとろみがあれば、むせる頻度を減らせるということです。

少しとろみをつけるだけで効果があるため、水筒やペットボトルに入れて持ち歩いても周りの目を気にせずに安全に飲むことができるとしたうえで、抵抗がある人は外出中や夏の間など、場所や期間を区切って実践してほしいと呼びかけています。

戸原教授は「暑いときは水を飲み過ぎるくらいがちょうどいい。水筒やペットボトルなどを一日1本飲むといった分かりやすい目標を作って水分を摂取してほしい」と話しています。

コップ1杯の水に少量のとろみ剤

埼玉県川口市に住む大成光男さん(82)は、3年ほど前から、水やお茶を飲むとむせることが増えました。ひどい時には目の前が真っ暗になって話をすることができなくなり、心拍数も上がるため、水やお茶を飲むことが怖くなっていったということです。

次第に水分を取ることを避け、妻の暢子さんに勧められても、汗をかいていないからと断ることが多くなりました。

このため、暢子さんは、コップ1杯の水に少量のとろみ剤を入れて渡すようにしました。

最初はとろみがかった水に抵抗感があった大成さんでしたが、ゆっくり喉を通るような感じがして自分のタイミングで飲み込めるようになり、むせることが少なくなりました。

次第に積極的に水分を取るようになり、今では日課の散歩のあと、コップ1杯の少しとろみをつけた水を飲み干しているということです。

大成さんは「むせると、いてもたってもいられないような苦しさがあり、それが嫌で、とろみをつけるようになりました。とろみがあると飲みやすく、最後まで残さず飲みきることができます」と話していました。

また、妻の暢子さんは「むせるのを嫌がり水を飲まない気持ちも分かりますが、水分を取らないとこの時期は大変なので、なんとか水分を取ってもらいたいです」と話していました。

専門家「一日に飲む量の目標を作ること大切」

東京医科歯科大学の戸原玄教授は、お年寄りの特性と熱中症を防ぐポイントについて、次のように話しています。

「年齢を重ねるにつれ、喉が渇いたと感じるのが遅くなる。通常、体調が悪くなるほど水分を取り過ぎることはないので、暑いときは飲み過ぎるくらいがちょうどいいと思ってほしい。また、お年寄りは、コップで何杯飲むよう言われても覚えるのが難しいので、水筒やペットボトルなど一日1本飲むと決めたうえで、夜になっても余っていたら残さないようにするといったように、分かりやすい目標を作ることが大切だ」。

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