地方から上京する学生が安価に入居できる県人寮。その約7割が男子学生専用で、地方の女子生徒が首都圏の大学に進学する高い壁となっている。地方出身の東大生が創設したNPO法人「#YourChoiceProject」は9日、東京都内で記者会見を開き、調査結果を公開。多くの自治体が、男子学生のみを支援している現状が浮かび上がった。
道府県の育英会などが運営
県人寮とは、ふるさとから上京した学生を支援しようと、特定の道府県出身の学生のみを受け入れる寮のこと。多くは道府県の育英会などが運営している。
全国35道府県が、東京都内を中心に52の寮を設置している。県人寮の平均家賃(月額)は3万2250円で、近隣家賃の半額以下。地方出身者の心強い味方だ。
調査の結果、首都圏に県人寮を設置する35道府県のうち、約5割が男子学生専用の寮しか設置していなかった。また都内を中心にある52寮のうち約7割が男子学生専用だった。受け入れ人数は、男子学生2627人に対して女子学生は689人と大きな差があった。
男子寮のみ運営する17自治体(高知県を除く)の24寮に、今後女子を受け入れる予定があるかどうかを聞くと、回答のあった18寮(宮崎県を除く)のうち、16寮が「ない」と回答した。女子学生を受け入れるのが難しい理由について尋ねると、13寮が新築・改修などにあてる資金不足を挙げた。
地方に住む女子の選択肢を広げようと同法人を創設した兵庫県出身で東京大法学部4年の川崎莉音さん(22)は「地方は、性別役割意識が強い。自治体として女子を受け入れないのは、東京への進学を推奨されていないとも受け取られるのではないか」と語る。
受け入れない理由として、「女子学生の需要見込みが薄い」「東京に出る女子学生は、裕福な家庭が多いため需要が低い」との回答もあった。
川崎さんは「教育にお金をかけることによって見込まれるリターンが高いからと、保護者は男子によりお金をかけているというデータもある。結果的に、裕福な女子学生しか上京できていないのではないか。ますます、地方の女子は東京の大学へ進学するハードルが高くなる」と問題視する。
同法人メンバーで、東大大学院修士課程1年の森原遥さん(23)も「地元の雰囲気に10代は強く影響を受ける。県人寮に女子が受け入れられれば、応援されているんだという気持ちになれる。全国で取り組みを進めていくことが大事ではないか」と語った。【中嶋真希】
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