明治時代に改築されて今年で130周年を迎えた松山市の道後温泉本館が11日、保存修理工事をほぼ終え、5年半ぶりに全館で営業を再開した。午前6時の営業開始時間を前に、観光客ら70人ほどが列を作った。

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 本館横の待機場所の最前列にいたのは、松山市に住む大学3年の森下宥梨(ゆり)さん(20)と野瀬琴音さん(20)。前日午後10時から「一番乗りを狙って来ました」。

 2人とも本館近くにある別館の「飛鳥乃湯泉」でアルバイトをしているが、本館のお湯に入るのは初めて。本館の全館営業再開については、「道後は本館があってこその道後、シンボルです」。夜通し外で待っていて体が冷えていたようで、「お湯で温まるのが楽しみです」と話していた。

 午前6時、大粒の雨が降り注ぎ、時折稲妻が光って雷鳴がとどろくなか、本館の上部にある振鷺閣(しんろかく)にある「刻太鼓(ときだいこ)」が6回打たれた。「道後温泉」の有名な扁額(へんがく)のかかった玄関の門が開き、入浴客らが入館していった。

 本館は1894~1924年に改築された木造の建物で、1994年に公衆浴場としては初めて国の重要文化財に指定された。

 木造建築を公衆浴場として使っているため傷みは激しく、松山市は2019年1月から総事業費約26億円をかけて本館の保存改修工事を実施。観光への影響を抑えるためエリアごとに工期をずらし、部分営業しながら、耐震補強や瓦のふき替え、内装の改修などを進めてきた。工事は今年末に完了する予定。(神谷毅)

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