7月7日に行われた東京都知事選挙。結果は現職・小池百合子氏が42.8%を占める約292万票を獲得、3選を果たした。2番手に前安芸高田市長の石丸伸二氏が食い込み、元参議院議員・蓮舫氏が3番手、元航空幕僚長の田母神俊雄氏が4番手だった。これに続く5番手になったのが、政治の世界では全くの無名だったAIエンジニア・安野貴博氏だ。テクノロジーの力で誰も取り残さない東京を作る「デジタル民主主義」を掲げ、これまでの選挙戦には見られなかったような施策を次々と展開。約15万票を得るという結果を残した。得意分野を生かした「AIあんの」、支持者の力を借りた「掲示板マップ」に、次々と更新される「参加型マニフェスト」。まさに“革命レベル”の戦いがどう生まれたか『ABEMA Prime』で迫った。
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■政治の世界では全くの“無名”だったAIエンジニア
支持政党があるわけでもなく、突然に都知事選へと出馬した安野氏。もともとシステム改善に興味があるエンジニアだったが、妻・里奈さんから「そんなにシステムと言うなら選挙に出た方がいい。どうせやるなら首長選がいい」と提案されたところ、「絶対に出る」と即決。翌日には立候補に必要な供託金300万円を納めてきたという。ここから17日間に渡る選挙戦がスタート。まずは「骨太な政策が必要」と96ページにも渡るマニュフェストを発表すると、支持者から集まった意見を集約してこれを次々と更新。選挙戦が進むに連れて増ページを繰り返し、130ページにまでなった。「みんなで東京の未来を考える時間ができたことにすごく手応えがあった。マニュフェストを読んでいただく方もすごく多かった」と振り返った。このマニフェストは早稲田大学マニフェスト研究所が、100点満点で採点したところ小池氏(34点)、石原氏(30点)、蓮舫氏(32点)、田母神氏(18点)を大きく引き離す50点と高く評価された。
■「AIあんの」が6800件も回答 支持者の意見を反映する「参加型マニュフェスト」
AIエンジニアらしく、安野氏の名前を広めるきっかけになったのもAIだった。130ページのマニフェストをAIに学習させ、YouTubeのライブ機能を使って、17日間・24時間、ずっと質問に答えられるようにした。寄せられた質問は約6800。質問者にはAIが政策についての説明を返すが、同時にどんな質問だったのかを内部で分析した。「質問を一方的に返すだけじゃなくて、どういう質問がどれだけあったかを内側で分析した。教育費の所得制限に関しては、すごく批判とか質問があり、それをマニフェストとしてアップデートしようという議論にもつながった」。大きな会場で講演会を開いたとしても、政策を伝え、かつ質問に返すということができるのも、数に限界がある。「AIあんの」は次々と質問に答えては、安野の政策をより仕上げていった。
■支持者の力で1万4000カ所をコンプリートした「掲示板マップ」
斬新な取り組みに注目し始めた支持者が、ゲーム感覚で参加したのが「掲示板マップ」だ。都内1万4000カ所に設置された掲示板だが、ここにポスターを貼るかどうかは候補者次第。業者に頼むと1000万円はかかると言われる中、安野氏はネット上にマップを公開。掲示板の位置とポスターの有無がわかるようにし、支持者が1枚また1枚と貼っていくと、ついに掲示率100%を達成。全ての掲示板にポスターが貼られているのは、安野氏を除けば小池氏ぐらいだ。過去最多、56人の候補者の中には、金も時間もないからポスターを全て貼るなど無理と訴える者もいたが、安野氏はアイディアでこれを実現した。
■初挑戦で5位と大健闘、15万票 その先は…
都知事選後は勝った小池氏、健闘した石丸氏、本人の想定以下で敗れた蓮舫氏などに対して、様々な声が浴びせられる中、安野氏に対しては好意的な声ばかりが集まってくる。期間中から安野氏に着目、支持していたひろゆきは「上位の人たちには(選挙が)終わった後にみんなが文句を言っているが、安野さんの文句を言っている人を見たことがない。これは結構、面白いなと。敵を作らないというのがすごい」と絶賛した。選挙戦ともなれば、対立候補のことを下げるような発言をするケースもあるが、安野氏は決してそれをしなかった。さらに「AIあんの」「掲示板マップ」などの施策はオープンソースとして公開、今後選挙に出ようという人に対して提供するというから驚きだ。
作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏も、対立構図にこだわらないのは、現代的だと分析した。「今の世代における政治姿勢の特徴だ。敵味方で対立しあうことよりも、システムを発掘して社会を変えていこうとする」安野氏の姿勢に、他の陣営から“協力者”として声がかかることも予想されている。当の安野氏も「デジタルテクノロジーをうまく使って民主主義自体をアップデートすることが一番やりたい。サービスやシステムは是非使っていただきたいし、今回得た知見やサービスをしっかり他の人にも使っていただけるようにする活動をしたい」と述べた。
今後の政治活動については未定だが、都知事選を一緒に戦った妻・里奈さん、チーム安野のメンバーたちと相談した上で決めていく。4年後、再び都知事選に出るという選択もあるが、「次の都知事選もあり得るオプションだが、どちらかというと議員よりは首長の方が自分のやりたいこと、デジタル民主主義を実現する意味では近いなと思っている」とコメント。ひろゆきも「都内の知名度なら全然ある。区長選レベルならいけるんじゃないか」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
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