「無印良品」といえば何を思い浮かべるだろうか。文房具、食品、生活雑貨など、それぞれに定番があるかもしれない。

1980年にスタートした無印良品には10年、20年選手のロングセラー商品がいくつもある。

たとえば「脚付マットレス」や真ん中がくぼんだデザインの「バスソープ」などが代表格だ。

スキンケアシリーズもその一つだが、最近は、発売後すぐに売り切れとなり品薄が続く商品も登場し、注目度が上がっている。

さらに今年5月、無印良品のスキン・ボディケアアイテムによるセルフケアを提案する『やさしいもので整える 無印良品のセルフケア』が世界文化社から出版された。

人気の秘密を、良品計画のスキンケア開発を担当して9年目になる中野倫弥さんと、本を編集した世界文化社の能勢亜希子さんに聞くと、その背景には、創業当時から変わらないものづくりを追求する姿勢があった。

発売から20年超のロングセラー

無印良品のスキンケアには、敏感肌用、エイジングケア、 クリアケア、4月に発売された薬用ブライトニングの4シリーズがある。

去年9月にリニューアルされた敏感肌用は、発売から24年という超ロングセラーのシリーズ。

2023年9月にリニューアルした敏感肌用シリーズ(画像:良品計画)
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いずれも、装飾性をそぎ落としたシンプルなボトルがトレードマークだ。

本書を企画した編集者の能勢さんは、無印良品のスキンケアに注目した理由をこう話す。

「スキンケアシリーズがとても人気があることを知って、何がどう良くて、どんな人たちに支持されているのかを掘り下げてみたくなったんです。

調べ出すと、デパコスにも負けない成分を使っているのに低価格。コスメも心地よい暮らしを実現する日用品の延長にあるものという考えに惹かれました」

SNSの力も売れ続ける理由の一つ

『やさしいもので整える 無印良品のセルフケア』の最初の章では、年代や性別、ライフスタイルも異なる12人が、それぞれのお気に入りのアイテムを紹介している。

家族全員が敏感肌で敏感肌用シリーズを愛用している一家は、「コスパがいいので、家族みんなでじゃばじゃば使っても罪悪感がありません」とのこと。

ニキビやおでこのべたつきが気になる男子高校生は、ネットなどで調べて「敏感肌用化粧水 高保湿」にたどり着き、お小遣いで購入している。

SNSでも話題になった発酵導入美容液(画像:良品計画)

肌が薄く、かゆみや赤みが出やすく悩んでいたという女性は、65%以上がうるおい成分の米ぬか発酵液でできた「発酵導入美容液」を使用してから、肌トラブルが減ったという。

この女性が利用している発酵導入美容液は、2023年8月の発売直後に話題になり、すぐに品薄状態に。

能勢さんも本の撮影の際に手に入らず、他県まで買いに行ったとか。

良品計画のスキンケア開発を担当する中野倫弥さん

「基本的に、広告や宣伝をあまりしない社なんです」というのは、良品計画でスキンケアを開発する中野さん。

それでもスキンケアシリーズが売れ続ける理由を能勢さんはこう推測する。

「やはり商品の力が強いからSNSでバズるんですよね。これだけヒットした背景は、SNSの力が大きいのではないでしょうか」

天然由来の成分への徹底したこだわり

「無印良品」は、1980年に「西友」のプライベートブランドとして始まった。

当時のポスターのキャッチフレーズは、「わけあって、安い」。※わけに傍点

「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」という3つの視点をものづくりの基本とし、生活用品・食料品40品目を発売。

パルプの漂白プロセスを省いたベージュの紙のパッケージ、簡潔なデザインは、この時にすでに確立していた。

1997年に登場した化粧水(右)と乳液(左)(画像:良品計画)

無印良品で化粧水が誕生したのは、1990年台後半。

肌への優しさを追求すること、そのために主成分である「水」にこだわり、天然水を使用するというコンセプトは当初から変わらないという。

これまでも、水をはじめ、植物由来のうるおい成分を使うようにしてきたそうだが、2023年9月にリニューアルした敏感肌シリーズは、全ての原料を天然由来成分(天然成分を化学的に反応させた成分を含む)のものを使うことを徹底している。

スキンケアシリーズに込める思いを語る中野さん

「ただ、成分表示に書いてある成分としてはほかの化粧品と同じなので、そのこだわりが伝わりにくいんですが、最初に化粧品を作り出してからこだわっているところです」と中野さん。

今後、全てのスキンケアシリーズを天然由来成分100%にしていく予定だそう。

毎日使い続けられるものを

ただし、いくら品質が高くても、「毎日使い続けられる価格でないと意味がない」と中野さんは話す。

「スキンケアはあくまで、顔を洗って歯を磨くといった日常動作の一つだと考えています。毎日使い続けられる価格を実現するために、ボトルの簡略化など、削ぎ落とせるところは徹底的に落としています」

4月に発売された薬用ブライトニングシリーズ(画像:良品計画)

創業当時から変わらない理念の一つである「包装の簡略化」は、スキンケアシリーズにも反映されていた。

また「毎日使い続けられる」という考えから、スキンケアのボトル等のデザインは「主張するものではなく、暮らしの中で自然となじむことも大事にしています」と語る。

さらに、2023年のリニューアル時には、容器に100%再生プラスチック(PET素材)を使用したリサイクルボトルを採用。

店頭で回収したボトルをスキンケアのボトルに再利用する「ボトルtoボトルリサイクル」の取り組みもしていく予定だ。

徹底した理念と並々ならぬこだわりのある無印良品のスキンケアシリーズ。

「スキンケアは、自分自身と向き合うセルフケアの時間であると思います。肌への効果だけじゃなく、楽しんだりリラックスできたりなど、無印良品のスキンケアシリーズが、その貴重なひと時を大切にするための一助になれば嬉しいです。ずっと使い続けていただけるように、この先10年、20年、30年と続くシリーズにしていけたらと思っています」

『やさしいもので整える 無印良品のセルフケア』(世界文化社)

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