人と向き合って話をする時に気になる“口臭”。前編では、においの原因とセルフチェック法をご紹介した。今回は、日頃からできる予防法を内科医の桐村里紗さんに聞いた。

(前編記事はこちら:“口臭”は自分自身では気付かない…どうしたら分かる?チェック法とにおいが発生する原因を医師が解説)

口臭予防には唾液の分泌と徹底した歯垢除去を

前回、口臭は「生理的口臭」と「病的口臭」の2つに分けられるとお伝えした。

生理的口臭は、においが強いものを食べた時や唾液が少なくなった時に誰でも出るもの。病的口臭は、腸内環境や内臓機能の悪化、口や喉の感染症やがんなどで発生するが、そのほとんどは歯周病によるものだ。

それぞれを予防するための適切なケアについて、桐村さんはこう話す。

「『生理的口臭』のケアは、普段からさらさらした「質の良い唾液」を分泌させることが重要です。日常的に唾液がきちんと分泌されていれば、ほぼ人には認知されない健康的な口臭レベルを維持できます」

唾液は血液に由来するため、食生活では過剰な脂や砂糖を避け、良い血液を作ることが重要だ。そして唾液が出にくい場合は、唾液腺を刺激するようしっかり噛むことや話すことを意識しよう。

砂糖不使用のキシリトール100%ガムも、口腔ケアに有効(画像はイメージ)
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「虫歯リスクのない砂糖不使用のキシリトール100%のガムを噛むことも有効です。歯茎の良い血流を保つために、喫煙者は禁煙を心がけてください」

一方、『病的口臭』についてのケアは歯周病対策にもつながる行為になる。

「歯垢は歯磨きでは6割しか落とせません。あとはデンタルフロスや歯間ブラシで2割、専用の水流洗浄で1割、残り1割の磨き残しは歯科でケアしてもらいましょう。歯磨き粉は必須ではなく、大切なのは『歯垢をしっかり落とす』ということです。歯ブラシは、奥歯の間までしっかりと入るコンパクトなサイズで、歯茎に優しい柔らかめなブラシが基本です」

一般的な歯ブラシに比べ、タフトブラシ(左)は歯の間などが磨きやすいように工夫されている(画像はイメージ)

さらに桐村先生は、歯茎の間や歯間を磨くための「タフトブラシ」(毛束が小さく一つにまとまっている歯ブラシ)との2本使いを推奨する。忙しい人は「音波ブラシ」や「超音波ブラシ」(音波や超音波を利用して磨く。ただの電動歯ブラシに比べより歯垢が落ちるという)を取り入れることも有効だ。圧倒的に歯垢が取れるとのことで、将来の健康への投資と思って取り入れると良いだろう。

口腔内フローラの落としすぎに要注意

しかし一方で、口腔内フローラ(細菌の集団)には病原菌やウイルスなどの、外的な病原体から粘膜を守る働きがある。殺菌作用のある歯磨き粉や口内洗浄液で落としすぎると、口腔内のバランスが崩れて、逆に粘膜が脆弱(ぜいじゃく)になり、感染リスクが増える懸念もある。

「口腔ケアに必要なのは殺菌ではなく、口腔内フローラの環境整備です。歯磨き粉を使うなら、殺菌成分無配合のもので十分です。でも何か使いたい場合は、強力な殺菌作用はないものの、適度な抗菌作用で口腔内フローラのバランスを乱さないカテキンやタンニン(柿渋)配合のものがいいでしょう」

歯磨き粉にも様々な種類がある。常在菌に影響しないようにするには、カテキンやタンニン配合のものがオススメ(画像はイメージ)

習慣的に取り入れるなら、砂糖不使用のキシリトール100%のガムや、良い菌を補い口腔内環境を整える乳酸菌「ロイテリ菌」などの「プロバイオティクス」のタブレットを。病原性の菌が抑えられ、口臭改善になるとのことだ。

口腔ケアで口臭と健康に自信を持とう

口臭は発生してからではなく、発生する前からケアしておけば防ぐことができると桐村先生は強調する。

「口臭は健康のバロメーターです。日常的なヘルスケアとして口腔ケアを取り入れれば、自分は大丈夫だという自信になります。口臭予防をただの臭い対策と考えず、全身の健康管理として捉えることが大切です」

適切なケアを習慣化し、口臭にも健康にも自信を持つことが、円滑なコミュニケーションにもつながりそうだ。

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内科医・認定産業医の桐村里紗さん

桐村里紗
内科医・認定産業医。tenrai株式会社代表取締役、(公財)日本ヘルスケア協会・プラネタリーヘルスイニシアティブ代表。
生活習慣病から終末期医療まで幅広く診療経験を積み、予防医療の観点から臭いにも着目。口腔から腸内環境、地球環境までをつなぐプラネタリーヘルスを推進している。著書に『日本人はなぜ臭いと言われるのか 体臭と口臭』(光文社新書)他。ホンマでっか!?TVではにおい評論家・腸活評論家として出演するなどメディア出演多数。

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