戦後まもなくの火災で焼損した世界最古の木造建造物、法隆寺金堂(奈良県斑鳩町、国宝)の飛鳥時代の天井板に、男性の顔の落書きが残っていた。

 絵は5センチ四方ほど。墨で描かれ、布の冠をかぶり、しわやひげのような表現も見られる。天井板は、金堂の初層外陣に位置し、角材を格子に組んでその上に板を張る「格天井(ごうてんじょう)」と呼ばれる豪華な天井の一部だった。1949年の火災で、格子内に描かれた彩色の蓮華(れんげ)文は焼失したが、落書きは角材に隠れる位置にあったため無事で、絵の周辺だけ辛うじて焼け残っていた。

 有賀祥隆・東京芸術大客員教授(日本美術史)は「天井画に関わった画師(えし)が、仕事の合間に同僚の似顔絵を描いたのではないか」と推測する。顔の上の位置にある指を曲げた手の絵にも注目し、「繊細な筆遣いで、素人とは思えない」と話した。

 昨年3月に寺が発行した「法隆寺金堂古材調査報告書」に写真が掲載された。49~54年の金堂修理では、ほかにも顔や馬、漢字など数百点の落書きが報告されている。

 落書きのある天井板を含む金堂の古材3284点は、今年5月の文化審議会の答申で、国宝に追加指定されることになった。

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