今話題のニュースを詳しく解説する急上昇ニュース。今回は、障害がある人が働くA型事業所を取り巻く環境について考えます。担当は生本記者です。
(生本ひなの記者)
「実はいま、障害者が働く環境に変化が出ています。2024年度から、事業所に国が支払う報酬のルールが改定され「生産性」が重視されるようになったんです。
障害や病気などで一般就労が難しい人を対象に就労継続支援を行う事業所。A型とB型の2つがあり、A型では利用者が雇用契約を結び、業務に対して「最低賃金以上の給与」が支払われます。一方、B型では雇用関係を結びません。利用者は比較的簡単な作業を行い「工賃」が支払われます」
(岸下恵介キャスター)
「A型とB型を比較すると、時給に換算するとずいぶん差がありますね」
(生本ひなの記者)
「一般的にA型の方が、利用者は多くの収入を得る事ができるのですが、赤字の事業所が少なくありません。そんな中、3年に1度の改定で2024年4月に報酬の規定が見直されました。A型事業所では7項目(労働時間・生産活動・多様な働き方・支援力向上・地域連携活動・経営改善計画・利用者の知識、能力向上)の評価の総合点で報酬が決まるのですが、24年度からこの「生産活動」の項目で赤字を改善できていないと報酬が減らされるようになりました。
(中塚美緒キャスター)
「自分達で売り上げを作って給料を支払う、それができていないと補助が大幅に減るというのが今回の大きな改定なんですね」
(生本ひなの記者)
「はい。ただ、この改定を受け、収益力の乏しい事業所が運営の危機に迫られているんです」
(利用者)
「お待たせしました、チキン南蛮です」
観音寺市にある障害者就労支援施設「リール」、週替わりのランチやスイーツが楽しめるカフェのほか美容室などのサービスを提供していて、13人の障害者が働いています。
(利用者は…)
「美容室で洗い物や清掃をするのが好き。施設外就労で草抜きをするのも楽しい」
しかしここ数年、新型コロナや物価高の影響を受け、店は厳しい経営状況が続いています。
そんな中での今回の報酬改定、現場の職員にも大きな負担がのしかかっています。
(リール サービス管理責任者補佐 大西祐子さん)
「収益に重きを置いてしまう部分がある。どれだけ職員が営業を回れるかということを一番に話を進めている。営業に出てしまうとその分、現場の職員の人手不足に。支援の部分で利用者と関わる時間が少なくなるので、そのバランスをどう上手くとるかが課題」
収益性が厳しく評価されたことで、この事業所では、年間数百万円の報酬が減ったといいます。このため、これまでA型事業所として運営していましたが、規模を縮小することに。24年2月からA型とB型の多機能型に切り替えました。
(社会福祉法人ラーフ 毛利公一理事長)
「厳しい改定だなと。一方で、B型就労からA型就労にステップアップしてもらい、A型就労から一般就労への道を作っていく。前向きな形でこの決断を捉えている」
利用者の大切な職場を守るために、働く意義を感じてもらえるよう日々、向き合っています。
(社会福祉法人ラーフ 毛利公一理事長)
「就労や社会に出る人たちを増やしたり、後押しすることを強めていきたいという気持ちは持っているので、経営力や取り組み強化、人材確保、やらなければいけないことは山積みだが、前を向いて進むしかない」
2006年に障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)が制定されてから、障害福祉サービスを利用する人は3倍以上に増えました。専門家は、今回の改定の背景にはサービスにかかる費用が増え続けていることにもあるといいます。
(岡山県立大学保健福祉学部 岩満賢次教授)
「自分で働ける人は、なるべく企業に移ってもらいたいというのがあるのでは。(事業所にとって)かなり影響が大きい。少なからず倒産や経営が成り立たなくなった事業所は多く出てくるだろう」
(岸下恵介キャスター)
「かなり厳しい状況が伺えました・・・ただ、一般企業への移行はそんなにスムーズにいくものではないですよね」
(生本ひなの記者)
「そうなんです。岩満教授によると、企業側で配慮をしてくれるところはいいけれど、働いていると公的なサービスが少なくなってしまうのでA型事業所のようなサポートがある場所を必要とする人は一定数いるといいます。A型事業所を存続させるためには、地域の人が積極的に事業所を利用したり、企業が業務の一部を発注するなどして協力してほしいということです」
以上、急上昇ニュースでした。
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