赤ちゃんは「ミルクのような甘い香りがする」と聞くことが多い。しかし、我が子を抱っこしたときに頭のあたりから「あれっ、何か臭い?」と思ったことはないだろうか? 

特に初めての子育ての場合は心配になるかもしれない。赤ちゃんの頭がにおう時の原因とケアについて、 小児科医で「高座渋谷つばさクリニック」の武井智昭院長に聞いた。 

赤ちゃんも「汗臭い」時がある?

武井院長によると、赤ちゃんの頭がにおう原因のひとつは、汗をかくことによって雑菌が繁殖することだという。

汗が出てくる「汗腺」は頭皮に多く、そもそも頭は体の中でも汗をかきやすい場所。しかも、汗腺の数は乳幼児期から大人まで変わらず、皮膚の面積が大人よりも狭い赤ちゃんは、汗腺もギュッと集まった状態になっている。

そのため、赤ちゃんは頭から汗をかきやすく、頭皮が湿った状態になりやすい。この「汗で湿った頭皮」を放置していると、繁殖した雑菌によって「汗臭い」においを放ってしまうのだという。

母親由来のホルモンで「皮脂臭く」なることも

また、赤ちゃんの頭から「ツンとするような、少し不快に思うような別のにおい」がしてきたときは、その原因が「母親由来のもの」である可能性もあると武井院長は話す。

「赤ちゃんは、生まれてからしばらくの間、お母さんのおなかの中でへその緒を通じて受けていたホルモンの影響があるため、思春期の子どもと同じ体質になりやすいのです」

ホルモン由来のにおいは「思春期っぽい」?(画像はイメージ)
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いわゆる思春期の子供は皮脂由来の「脂っぽいにおい」がすることがあるだろうが、実は生まれたばかりの赤ちゃんも、母親由来のホルモンが皮脂の分泌を促すため、同じようなにおいを発するそう。このときのにおいは、生後3~4カ月ほど、長くても5~6カ月ほどで自然と落ち着くという。

この他では、母乳やミルクがこうした「ツンとしたにおい」を発する原因になりうる。
赤ちゃんの“主食”である母乳やミルクには脂肪分が含まれているため、皮脂の分泌が盛んになってしまうのだという。

そして赤ちゃんを母乳で育てている場合、母親の食生活も影響していると武井院長は話す。

「もしお母さんが脂っこい食べ物を好むようでしたら、母乳にも反映されます。結果、その母乳を飲んだ赤ちゃんの皮脂バランスが崩れ、においの原因になってしまいます。赤ちゃんに母乳を飲ませているお母さんには、食事を和食中心にしてみてはとアドバイスをしています。3~4日で改善することも多いので、お子さんのにおいもそのくらいの日数で変化がみられると思います」

赤ちゃんの「汗」のにおい、対策は?

「ツンとするようなにおい」はホルモン由来で自然に落ち着くもの、また母親の食生活の改善で変化がみられるものだそうだが、今の季節、赤ちゃんはたくさんの汗をかく。我が子の「汗臭さ」が気になった時は、どうしたら良いのだろうか。
武井院長は「こまめに汗を拭く」ことが大切だとアドバイスをくれた。

「特に夏場は、こまめに汗をタオルで拭いてあげる。着替えをさせるといったケアが必要です」

しっかりと汗を拭いたり沐浴を(画像はイメージ)

毎日1回はしっかりと沐浴をさせて、体を清潔に保とうとしている親は多いだろう。ただ、それでも赤ちゃんの汗が気になる場合は、こまめに拭き取るだけでなく、一日のうちに複数回入浴させる、頭だけでも洗うなどのケアをしても良いという。

その時に重要なのが、入浴後にしっかりと頭皮を乾燥させること。
いわゆる“生乾き”の状態の頭皮は、汗をかいている時と同じように、雑菌が繁殖しやすい環境になる。
特に夏場は暑くてドライヤーをかけるのが億劫だったり、「すぐに自然乾燥するから大丈夫」と放置しがちかもしれないが、しっかりとドライヤーをかけたりタオルで拭き取ったりすることで、においの予防につながるのだという。

においで皮膚トラブル回避も

最後に武井院長は、「親が赤ちゃんの頭のにおいを嗅いでみて、いつもよりも汗臭い、ツンとする…など、『ん?』と引っかかることがあれば、頭皮の赤みやかさつきなどがないか、状態を確認する必要がある」と指摘する。

場合によっては「脂漏性湿疹」等の皮膚トラブルも隠れているかもしれないため、頭のにおいや頭皮の状態で気になる事があれば、医療機関への受診が望ましいという。

においが気になったら頭皮の状態をチェック(画像はイメージ)

赤ちゃんの頭が普段とは少し違うにおいがする、なんだか臭い…と気になった場合は、これらを意識してみてほしい。

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武井 智昭
小児科専門医・指導医、プライマリケア学会認定医。2002年に慶應義塾大学医学部を卒業後、総合病院やクリニック勤務を経て、現在は高座渋谷つばさクリニックの院長を務めている。0歳から100歳までの“1世紀を診療するプライマリケア医師”として、患者とその家族のトータルサポートを行っている。

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