愛知県内で東海道新幹線の保守用車両が衝突して脱線したトラブルは、浜松―名古屋間で運行が終日ストップする事態になった。「交通の大動脈」の分断に乗客は疲れ切った表情を浮かべ、駅員らが対応に追われた。復旧の見通しの情報がたびたび更新されるなど、情報も錯綜(さくそう)した。
JR東京駅の八重洲中央南口の改札付近では、浜松―名古屋間の運休を知らせる看板が立てられ、駅員5人ほどが乗客の対応に当たった。スマートフォンを手に駅員に問い合わせる乗客が列を作り、スーツケースを手にした他の乗客が滞留するなど混雑した。
仕事で大阪に向かう予定だった東京都千代田区の税理士、山田勝義さん(59)は「本来だったらもう大阪に着いているはずだったのに。こうなってしまったら、もう仕方がない」と汗をぬぐい、「動いてくれないと(駅内に)人があふれて収まらない」と話した。
東京ドームで開催中の都市対抗野球大会を観戦するため、岡山県倉敷市から東京を訪れていた無職の60代女性は、22日の帰宅を諦めさらにホテルに1泊することにした。「(事故を知らずに)今朝、服を配達で送ってしまったので、着替えができないのがきつい」と困惑した様子だった。
千葉県柏市の50代のパート女性は、大阪府から遊びに来ていた親戚を見送りに来ていた。親戚は22日中に大阪に戻らなければいけないといい、「(運転が再開している)浜松まではなんとか行くが、浜松から先の手段をどうしよう。数年ぶりに会えたのに……」と肩を落とした。
JR名古屋駅では、午前中から、多くの家族連れが新幹線改札口前で運転見合わせを知らせる電光掲示板を心配そうに見つめる姿が見られた。
夏休みに家族で三重県の鈴鹿サーキットを訪れ、東京都三鷹市の自宅に戻るところだった小学2年の石井佑侑(ゆう)さん(7)は「楽しかったけど、とても暑いので早く帰りたい」と疲れた表情を浮かべていた。
熊本県玉名市から三重県に住む親戚の家に遊びに来たという小学6年の坂本龍翼さん(12)は、今回のトラブルの影響で名古屋駅に予定より約1時間半遅れて到着した。出迎えた親戚の坂本泰助さん(73)は「遅れると聞いて心配したが、無事に来られてよかった」とほっとした様子だった。
JR東海は公式X(ツイッター)で復旧作業の終了予定時刻を公表したが、情報が錯綜し、たびたび変更になった。正午前に「夕刻まで続く見込み」と投稿したが、その後の投稿では「午後7時ごろ」「同9時ごろ」と先送りになっていった。最終的に午後7時過ぎの投稿で、浜松―名古屋駅間での終日の運行取りやめを伝えた。【田中綾乃、真貝恒平、遠藤浩二】
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