子供の身長の高さの気温は、“大人が体感している気温+7℃”だということをご存じだろうか。

サントリー食品インターナショナルと気象専門会社のウェザーマップが昨年、共同実験でこれを確認。そして「こども気温」と名づけ、熱中症対策を呼びかけている。

「こども気温」の知見を生かした熱中症対策についてサントリー食品インターナショナルに聞いた。

真夏にベンチコートを羽織った状態

「想像以上に暑い!」

梅雨明けして晴れた7月18日、午後1時の東京・八王子市の「えきまえテラス」。気温34.5℃の中、真冬用のベンチコートを羽織った母親は驚きの表情で言った。

サントリー食品インターナショナルと八王子市がコラボ開催した「こども気温」を啓発するイベントのワンシーンだ。

「こども気温」を体験できるベンチコート(画像提供:サントリー食品インターナショナル)
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ベンチコートは、外面に風を通さない素材を用い、中面は起毛になっている。これは、 “大人が体感している気温+7℃”の「こども気温」の世界を体験できるように特注したもの。

この日の気温を「こども気温」に換算すると、41.5℃。34.5℃でも十分暑いが、「こども気温」では40℃を超える猛暑になっていた。

サントリー食品インターナショナル広報担当の中井宏美さんは「こども気温」という言葉を発信する理由をこう話す。

「この10年でも猛暑日が増えています。そんな中で、保護者の方に子供は大人より熱中症のリスクが高いことを広く伝えることが必要だと考えました。そこで昨年検証実験を行い、結果をわかりやすく伝えるために作った言葉が『こども気温』なのです」

身長が低いほど暑くなる

昨年の実験では、都内のビル屋上に大人(170cm)と子供(120cm)のマネキンを並べ、それぞれの胸の高さ(150cm、80cm)で気温を測定(2023年5月17日、快晴の真夏日の午後1時45分~2時45分)。

結果、大人が31.1℃だったのに対し子供は38.2℃で、7.1℃の差が出た。

実験のサーモグラフィー画像(提供:サントリー食品インターナショナル)

この差は、主に地面からの「照り返し」の影響によるものだという。つまり、身長が低くなればなるほど、より照り返しの影響を受け、気温も高くなることになる。

「120cmは小学1、2年くらいの身長ですが、それより幼い子供はより注意が必要になります」(以下、中井さん)

なお、ウェザーマップが「こども気温」に換算して“猛暑日(最高気温35度以上)”を算出したところ、2023年7~9月で通常の猛暑日が計22日だったのに対して「こども気温」では計56日あったという。

海やプール、お祭りは要注意

こうして数値化してみると子供の置かれた環境が分かりやすくなるが、さらにウェザーマップは今年、危険なシーンをまとめた「こどもの気温のきけんまっぷ」を発表。中でも、夏休みには特に注意したい場所があるという。

「こどもの気温のきけんマップ」

「実は、プールや海など、水辺も危険度が高いんです。直射日光だけでなく、水や海水、プールサイドや砂浜からの照り返しで体温が上がりやすい。また、水が口に入るために喉が乾いていることに気がつきにくいのです」

これからイベントやお祭りに出かける予定を立てている人も多いと思うが、そのような人混みも要注意とのこと。

「人が多く混み合っている場所では子供の身長の高さに熱がこもりやすくなります。また、行列に並んだり歩き回ったりして体力が落ちている時も熱中症の危険が高まります」

子供の熱中症予防の3カ条

では、子供の熱中症予防ではどのような点に気を付ければいいのか。サントリー食品インターナショナルとウェザーマップは以下の3つの行動を推奨している。

(1)日陰ファースト
直射日光や照り返しを避けるために、外ではできるだけ日陰にいる習慣をつけよう。コンクリートやアスファルトは照り返しが強い。また、ビルやマンションの側面からも照り返しがあることを覚えておこう。

(2)30分を目安に、遊びと水分補給をセットにする
30分外遊びをしたら日陰で水分・塩分補給タイムを設けることを決めて、習慣にすることが大切。水分補給に適した飲料を何種類か用意してコップに注ぎ、何かを当てるクイズをやるなど、ゲーム性やイベント性を持たせるのもお勧めとのこと。

外遊びの水分補給は30分ごとを目安に(画像はイメージ)

(3)凍らせた飲料を持ち歩く
凍らせた飲料を持ち歩けば、水分補給だけでなく、いざ熱中症になったときにも首や脇などを冷やして応急処置に利用することができる。ペットボトルを凍らせる時は、ボトルが冷凍に対応しているか確認しよう。サントリーの場合は、GREEN DA・KA・RAをはじめ「冷凍もおいしい!」の表示があるものが冷凍対応の設計になっている。

「子供にしっかり水分を取らせないといけませんね…」

イベントで、ベンチコートを羽織って「こども気温」を体験した母親は、子供の熱中症対策を改めて意識するきっかけになったとのこと。自分の体感を基準にせず、“大人+7℃”を意識して、子供の熱中症対策に取り組んでほしい。

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