好感度が高いのにお見合いから先に進まない
アラフォー男性の直也さん(仮名)は、勉強家で婚活に対してもとても熱心。私がお見合いやデートのマナーなどを解説した動画20本ほどを、お見合いのたびに1回、デートのたびにまた1回と、合わせて10回以上繰り返し見て、内容を頭に叩き込んでいました。お中元やお歳暮を欠かさず気がよく利く。好感度は抜群です。年収も700万〜800万円と悪くありません。
ところがなかなかお見合いから先に進まない。原因の1つは、まず髪の毛が極端に短く角刈りで、見た目があまり“女性ウケ”するタイプではないこと。「直すべきところがあれば、どんどん指摘してください」と言うので、まずは髪の毛を少し伸ばして自然なスタイルにしてもらいました。髪型が変わるだけで第一印象はかなり変わります。案の定、ヘアスタイルを変えたら別人のように格好よくなりました。
もう1つの原因は、かなりの早口。内容が聞き取れないほどの早口なんです。頭の回転が速いせいかもしれませんが、そのせいでお見合い相手からはいつも「何を言っているかわかりません」と、フラれルコともたびたび。
本人は早口の自覚がないので、カウンセリングで「もう少し落ち着いて、ゆっくりしゃべりましょう」と繰り返し指摘。そもそも会話中に、相手の顔が曇っていることに気が付かないことも問題です。
「話をするときは相手の顔色を見て、眉間にしわが寄ったり、顔つきが変わったりしたら、『何かおかしい』と気付けるようになりましょう」とアドバイスしました。
直すべきところを指摘すると、直也さんは素直に改めようとします。その「学ぼう」という姿勢はいいところ。学ばない人の婚活は苦戦します。「俺は年収700万以上ある。そんな俺が今さら何を学ぶ必要があるんだよ」と自信満々の男性もたくさんいます。自分を客観的に見られない、教えていることに耳に傾けない、そういう人の結婚はうまくいきません。
高収入でも「アラフォーだから」と低姿勢の女性
直也さんよりも1歳年上で同じアラフォーの女性・里穂さん(仮名)。直也さんと同じ一流大学卒業で、年収は1200万〜1300万円。ただ、出張や転勤が多いことと、アラフォーという年齢を気にしており「婚活は難しいのではないか」と低姿勢です。
お相手については、「年収はあまり気にしません。自分の働き方を理解してくれればいい。年齢も50代でもいいです」と言っていました。直也さんを紹介する際、「同じ大学の方です」と知らせると「それはいいですね」と喜んでいました。
直也さんと里穂さん、年収に差はありますが、趣味、教養、感性はぴたりと合っていました。初めてのデートは美術館。2人とも文化的なことが好きで、読書も好き。直也さんがおすすめした本を里穂さんは素直に購入し、次のデートで持ってきました。
里穂さんがその本で好きな一節を教えると、直也さんは「彼女は教養がある男性が好きなんだな」とピンと来たそうです。1日デートをしてもそれほど中身のある会話をしていないカップルが多いのですが、この2人は濃い会話をしていました。
里穂さんは頭がいいので、直也さんの話し方を早口とは思わなかったようです。たとえ聞き取れなくても前後の会話からだいたい把握できるので、いちいち「何を言っているかわかりません」なんてツッコまない。わからなければ「それはこういうことですか」と自分の言葉に置き換えて質問を返していくことができる女性でした。
ツアーコンダクターのごとくデートを計画
2人の趣味が一致したことに加え、直也さんは忙しいキャリア女性の心をつかむワザをしっかりと身につけていました。まずデート。直也さんはいつもツアーコンダクターのように細かく予定を立ててくれます。
里穂さんの地方での用事に合わせて直也さんも休みをとり、2人で過ごしたことがありましたが、そのときもランチを食べて観光をしてスイーツを食べて⋯⋯とその日の予定は直也さんがすべて組んだそうです。
毎回デートのたび、直也さんは事前にそのエリアでおすすめのスポットを3つ、4つ、LINEで送信。彼女が見て返事がなければ、「足りなかったかな」「方向性が違ったかな」と思い、またいくつか提案する。
既読になったまま何も返ってこないと「嫌われたのだろうか」と不安になる人や、場合によっては「俺のLINEに返信しないとは、何様なんだ」と怒り出してしまう人は少なくありません。
が、直也さんの場合は、里穂さんが猛烈に忙しいこともよくわかっているので、「気に入ったら時間があるときに『OK』と返してくれればいい」というスタンス。提案が押し付けではなく、相手のことを思いやったものになっているのです。
里穂さんにしてみれば、忙しいなか直也さんがポンポンと決めてくれるので、無理なく付き合える。高収入の女性のほとんどは、予定を組み立ててもらえると助かります。
仕事で疲れているので、いちいち「どこがいい? どこがいい?」と聞かれるのは面倒。好みをだいたい把握してくれてコンシェルジュのように候補を出してくれたら、そこから選ぶだけでいいので心地いい。
直也さんはかなりの量の情報を送ってくるそうで、女性によっては「こんなに送ってくるなんて迷惑、気持ち悪い」ということもありえますが、里穂さんは気にならない。逆にありがたいと感謝するのです。
直也さん自身が言うには、「ウザいゴリ押しか、波長が合うかは紙一重」だそう。彼はウザいゴリ押しにならないように、相手の顔色を見るようになっていました。素直な性格が功を奏したのでしょう。
転勤の多い彼女「僕が支える側になります」
さらに、直也さんは褒め上手でもあります。褒めるといっても「目が大きいですね」といった身体的なことはNG。その人の生き方について褒める。例えば「昨日残業だったんだ」と言えば、「遅くまでたいへんですね、お疲れさま」と返す。「こんな人がいて困った」と愚痴ったら、「そういうこともありますよね。気持ちわかります。がんばれ」と同意して励ます。
まるで兄のような包容力でいい気分にさせるんです。昨今は男女とも「受験勉強さえしてれば何もしなくていい」と甘やかされて育った人が多いので、直也さんのように、兄のように女性に接することができる人はなかなかいません。
そして、直也さんは自分が里穂さんより500万円ほど年収が低いということをよくわかっています。「里穂さんと結婚したら、僕は里穂さんを支える側にならなければ夫婦生活はうまくいかない」とわかっている。
里穂さんを紹介する際、「彼女はたびたび転勤があります。全国どこに行くかわかりません。それでもいいですか」と説明したときも、「これだけ年収があるということは能力が高く、彼女でなければできない仕事があるということ。転勤があってもやむをえない。僕がついていきます。僕はリモートワークを中心にして出社の必要があれば僕が動きます」という。
もっとも直也さん自身、年収700万〜800万円もあるので、経済的に里穂さんに頼るわけではありません。
「結婚=子どもをもつこと」ではないと理解
一方で、里穂さんは妊娠が難しくなる年齢に差し掛かっていることに引け目を感じていました。アラフォー男性で子どもを望む方は往々にして「女性は35歳までがいい」と言う人が多い。実際、直也さんも婚活を始めたばかりのときはそうでした。
しかし、婚活を通じてさまざまな女性に会うなかで、「年齢で人を決めるなんて無意味だ、結婚=子どもをもつことではないんだ」と気づき、里穂さんの人間性に向き合うことができました。互いに人生において大切な人ならば、子どもがいなくてもいい、2人の生活もうまくいくと思えたのです。
とにかく「子ども、子ども」と、若い女性を求める40代、50代男性は多いのですが、みなさん婚活は難航しています。世の中の男性には、もう少し視野を広く持ち、互いに尊敬し合うことができる「尊敬婚」をめざしてほしいですね。直也さんの婚活には学ぶべきところがたくさんあると思います。
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