◆最大150日の基本手当 特定社会保険労務士・小泉正典さん
<A> 労働者が離職した場合、安定した生活を続けながら再就職活動できるよう支給される雇用保険の失業給付(基本手当)についてまずは押さえましょう。 定年退職した場合も、65歳未満であれば基本手当が受けられますが、公的年金と一緒に受給することはできません。働く意思と能力があるのにもかかわらず、職が見つかっていない人が対象です。 給付日数は雇用保険の加入期間や退職理由などによって変わります。定年退職は自己都合での退職と同様、離職前の賃金を基に算出した日額が最大150日分給付されます。 受給できるのは原則、離職した日の翌日から1年です。ただ、60歳以上の定年退職者は最長1年の延長ができます。すぐに求職活動を行わない人は、離職日の翌日から2カ月以内にハローワークで延長を申請してください。 一方、65歳以上には基本手当ではなく「高年齢求職者給付金」が支払われます。働く意思や能力などが求められるほか、離職前の1年間に雇用保険の加入期間が通算で6カ月以上ある人が対象です。離職前の賃金を基に算出した日額が30日分か50日分支給されます。この額は離職前の50~80%ほど。離職日の翌日から1年以内に受ける必要があります。公的年金と一緒に受けられます。 定年後、60歳を過ぎて働くと、収入が減るケースが少なくないと思います。雇用保険にはそうした減収を補う制度があります。 切れ目なく働き、基本手当をもらわない場合は「高年齢雇用継続基本給付金」です。60歳時点と比べて75%未満に低下した人が受けられます。65歳未満で、雇用保険の加入期間が5年以上という条件も必要です。申請時点の給与の最大15%が65歳になるまで受けられます。ただ、60歳時点で雇用保険の加入期間が5年未満でも、続けて働くうちに5年に達した場合、その時点で給与が60歳時点と比べて75%未満であれば受給できます。 給付率は、どれだけ給与が減ったかで変わります。例えば、60歳時点の給与が月30万円、申請時点の給与が月18万円の場合、2万7千円が受給できます。申請手続きは原則、会社が行います。 一方、退職後に基本手当を受けた後に就職した人には「高年齢再就職給付金」があります。新たな勤め先の給与が以前の勤め先の75%未満となった場合、申請時点の給与の最大15%が受けられます。基本手当が100日分以上残っており、雇用保険の加入期間が5年以上といった条件があります。 給付期間は、基本手当の残日数が100日以上200日未満なら1年、200日以上は2年です。申請手続きは原則会社が行いますが、新たな就職先が給与の低下率を把握していないケースもあり、対象者は会社の人事部門などに申し出た方がいいでしょう。 高年齢者の就業意欲を維持し、65歳までの雇用継続を促してきた高年齢雇用継続基本給付金などは、今後縮小されます。2025年度からは、希望すれば65歳までの継続雇用が確保され、高年齢者やパート従業員の公正な待遇の確保も求められているからです。25年4月以降、60歳になる人の給付率は最大10%に引き下げられ、将来的には廃止も検討されています。<詳しく!>早期の再就職には「就業促進給付」も
基本手当を受給中に再就職すれば、給付日数が残っていても支給は終了する。ただ、早期の再就職が不利益とならないよう、「就業促進給付」が受けられる。 そのうちの一つが「再就職手当」。確実に1年を超えて働く見込みがあることが条件で、雇用主の証明などが申請書類で求められる。基本手当の支給日数を3分の2以上残して再就職した場合、基本手当の日額に、支給残日数の70%をかけた額が支給される。3分の1以上なら、残日数に60%をかけて計算した額となる。 ただ、基本手当の日額には上限があり、再就職手当では離職時の年齢が60歳未満なら6290円、60歳以上65歳未満は5085円。高年齢再就職給付金と併せて受給することができない点は注意が必要だ。 再就職手当を受給後に、「就業促進定着手当」が受けられるケースもある。再就職先で6カ月以上勤め、さらにこの6カ月間に支給された賃金を基に算出した日額が、前の職場の日額を下回っていることが条件。基本手当の日額に、支給残日数の40%をかけた分が上限となる。 (古根村進然) <こいずみ・まさのり> 1971年、栃木県出身。社会保険労務士小泉事務所(東京都目黒区)の代表を務める。労働・社会保障制度全般に詳しい。監修書に「60歳からの得する!年金2024-25年」(講談社)などがある。
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