「絶対に無添加でないとダメ」とは言わない理由
仕事が忙しくて料理ができない、1⼈暮らしで体調が悪い、仕事で昼夜逆転の⽣活をしている……そんな⼈でもコンビニに行けばお弁当やお惣菜が簡単に手に入りますよね。外食をするときも、チェーン店などではおいしいものを安く食べることができます。レトルト食品などは、誰が調理しても必ずおいしくできあがり、保存もきくありがたい存在です。
そうした便利な社会を可能にしている立役者とも言える存在が、食品添加物です。現代の食産業と添加物は、切っても切り離せない関係にあります。
先日無添加マフィンの食中毒事件が問題になりましたが、添加物には食中毒が予防できるなどの一定の効果があります。また、料理をする手間をショートカットしてくれる便利な一面もあります。
添加物にはメリットもデメリットもあり、少なからず身体へのリスクがあるのは事実です。私は自然食の仕事をしているので、添加物なしの食品を多く扱っています。しかし、だからといって「絶対に無添加がいい」とすすめているわけではないのです。
自然食品店を訪れるお客様の中には「絶対に無添加のものでないとダメ」「オーガニック以外は食べない」という考えを強く持った方もいらっしゃいます。
かくいう私も、自然食品の業界に入ったばかりの時はかなり思想が偏った時期がありました。「そんなものを食べたら病気になるよ」とお客さんにひどいことを言ってしまったこともあります。しかし長年この仕事に携わっているうちに、食べものに気を付けているのに体調を崩す人も多く見てきました。ストイックになりすぎるあまり、ストレスを抱えて体調を崩してしまっては本末転倒です。
野菜の栽培方法などと同じように、どんなふうに食品がつくられているかを知ったうえで、自分で優先順位をつけて食を選んでいくことが大切だと思います。
添加物があるから、食品のコストを抑えられる
⾷品添加物とは、「⾷品を製造する際に添加する物質」のことを言います。その目的は主に、⾷品の加⼯(⾊づけ・味つけ・⾹りづけなど)や保存のために使われているものです。現代の⾷生活は⾷品添加物なしでは成り立たないといわれるほど、さまざまな⾷品に使われています。
たくさんの種類がありますが、厚生労働省は大きく4種類に分類しています。このうち、「既存添加物」「天然⾹料」「一般飲⾷物添加物」は天然添加物と位置づけられています。
植物や海藻、昆虫、細菌などからつくられているものですが、その製造過程では薬品などが使われる場合もあります。対して、「指定添加物」は主に石油を原料として化学合成されたものもあるため、合成添加物と呼ばれることが多いです。
『食の選び方大全』より引用なんのために食品添加物を入れるかと言うと、保存性を高めたり、製造⼯程を省略したり、味を調整したり、栄養を補強したり、⾊をつけたりなどの理由があります。
また、何よりのメリットはコストダウンです。たとえば味噌や醤油、加⼯品も、伝統的な素材や方法では時間や材料費がかかり、その分値段が上がってしまいます。
その点、添加物は安価なので、その力を借りて製造法を変えることで商品のコストダウンにつながっているのです。着⾊料や⾹料なども昔は天然の素材が使用されてきましたが、化学合成した添加物に置き換えることで、より簡単に、より安く、より幅広い商品がつくれるようになっているんですね。
言うなれば添加物とは、伝統的な食品を大量⽣産する際に⽣まれる「足りないもの」を補うための補助役だとも言えます。
添加物を複数種類とり続けた場合どうなる?
では、添加物にデメリットはないのでしょうか? 議論が続いているところですが、デメリットがまったくないとは言い切れません。
まず、多くの⼈が心配するのは「身体は大丈夫なの?」ということでしょう。その点、使用されているすべての食品添加物には安全性が認められています。1つひとつの添加物や各種製品については、「これくらいの用量なら⼈体に問題はないですよ」と判断されているのです。
ですが、懸念が残るのは、「日常的に複数の食品添加物をとり続けるとどうなるのか?」といったことは統計的に調べることがむずかしく、不透明な部分があることです。
たとえば、食パンに使われているのが保存料1つだけならば、「はい、食べても大丈夫です」と言えるのですが、たいてい添加物は1つではありませんよね。防カビ剤、pH調整剤、⾹料、乳化剤など、さまざまな添加物が入っています。しかも、そのパンの小麦が遺伝子組み換えだったら? その小麦にポストハーベスト農薬が残留している場合は?
添加物にしろ農薬にしろ、1つひとつの成分は問題がないとして、では数種類を重ねて摂取し続けても安全なのか? そこにきちんとした結論は出ていないのが現状です。実際、国内外で食品添加物が、がんや⽣活習慣病の要因の1つだろうと考える専門家や研究者も少なくありません。
塩分、糖分、油分の過剰摂取や味覚障害
また、近年指摘されているのが食品添加物によって塩分や糖分、油分を過剰に摂取してしまう可能性です。たとえば市販されている缶コーヒーには、角砂糖6個分の砂糖が使われているものがあります。ふつうに飲むには甘すぎますが、味や風味が添加物で調整されることで、甘さを感じづらくなるんですね。同じことは塩分や油分などでも言えます。
関連した話で、食品添加物は味覚障害の要因になっているという話もあります。どういうことかというと、ふだん私たちは味を舌の表面にある「味蕾」という小さな器官でキャッチしています。
味蕾がキャッチした甘味、酸味、苦味などは、神経を介して脳の味覚中枢へと伝わって、「甘い」「しょっぱい」といった味を感じるのです。しかしこの味蕾は、亜鉛不足によって代謝が落ちると言われています。つまり、亜鉛不足になると味がわからなくなりやすいのです。
食品添加物の中には、リン酸塩、ポリリン酸、フィチン酸など、亜鉛の吸収を妨げるものがあります。それらがよく使われるインスタント食品やファストフードに偏った食生活は亜鉛不足を招き、味覚障害を起こす可能性があります。
特に味覚が育つ前の子どもが加⼯食品ばかり食べていると、いつの間にか味覚音痴になり、それが原因で偏った食事をしてしまうことも危険視されています。
最終的には自分の身体が求めるほうを選ぶ
私は個⼈的に、味には「脳」が喜ぶおいしさと、「身体」が喜ぶおいしさがあると考えています。脳が喜ぶおいしさとは、たとえば、疲れて甘いものを欲したときのチョコレートやケーキを食べたときのおいしさ、ストレスが溜まったときのビールのおいしさです。舌や脳が満足する、刺激的で中毒性のあるおいしさですね。
『食の選び方大全』(サンクチュアリ出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします一方で、「身体が喜ぶおいしさ」とは、朝に飲む味噌汁やぬか漬け、旬の野菜でつくったおひたし、消化が悪いときに食べるおかゆなど、「身体にしみわたるなぁ」という感覚のおいしさです。刺激はなく地味だけれど、ほっこりするようなおいしさです。
大事なのはどちらが良い・悪いではなく、今身体がどちらを求めているかだと思います。たとえばストレスがたまっているときには、ついジャンキーなものを食べたくなりますよね。そのとき何を食べたくなるかは、自分自身の状態のバロメーターでもあります。
要するに食品選びでは、「世間でどう言われているか」といったことではなく、自分自身がどう感じるか、何を身体に入れたいかという感覚が一番大事なのではと思うのです。
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