「食品ロス」について、国は6月、2022年度の推計値を472万トンと公表しました。

前の年度と比べておよそ50万トン減少したものの、このうち半分の236万トンは、商品の売れ残りや外食での食べ残しなど、「事業系」の分野で廃棄されています。

特に飲食店では、作りすぎや食べ残しが食品ロスにつながっていることから、厚生労働省は、食べ残した料理を衛生的に持ち帰るためのガイドラインを作ることになり、26日、大学の研究者や消費者団体などの専門家を集めた検討会の初会合が開かれました。

ガイドラインの対象は、レストランや居酒屋、それにホテルなどの飲食店で、検討会では、食べきれなかった料理の持ち帰りは自己責任を前提とした上で、食中毒のリスクを防ぐために、持ち帰りを可能とする食品の定義や、誰が料理を容器に詰めるかなど事業者と消費者に呼びかけるべき注意事項を検討していくことになりました。

出席者からは、食中毒が発生した場合の連絡先を明示すべきだ、とか、調理してから時間が経っている宴会料理などもあるので、事業者側が持ち帰りを認める料理を決める仕組みにすべきだ、などの意見が出されました。

検討会では、今後事業者からのヒアリングを行い、議論を重ねたうえで、今年中にガイドラインを取りまとめる予定です。

「食品ロス」新たな削減目標も策定へ

「食品ロス」について、国は、2030年度までに、年間980万トン捨てられていた2000年度の水準から半減させる目標を掲げて取り組んできました。

6月に公表された2022年度の「食品ロス」は推計値で472万トンでしたが、このうち、「家庭系」の分野は前の年度より8万トン少ない236万トンで、削減目標に届かなかった一方で、商品の売れ残りや外食での食べ残しなどの「事業系」の分野は、前の年度から40万トン余り減って236万トンとなり、初めて削減目標を達成しました。

これを受けて7月、岸田総理大臣は「食品ロス削減推進会議」で、事業系の「食品ロス」について新たな削減目標を今年度末までに策定するよう指示しています。

農林水産省によりますと、外食産業の中では、食品ロスの原因として客の食べ残しが半数近くの48.1%を占め、対応が課題となっています。

外食チェーンの取り組み

こうした中、食べ残しを減らそうと取り組んでいる大手外食チェーンでは、去年からグループの店舗およそ2400店で、食べ残した料理を持ち帰るための容器の販売を始めました。

食中毒を防ぐため、刺身などのなま物の食材を避けることや、持ち帰り後に十分に再加熱するなどの注意を行った上で容器を提供しています。

容器は1日におよそ3500個利用されていて子どもが食事を残した家族連れの利用が多いということです。

また、多くの料理を注文しすぎて残してしまうケースが課題となっていた食べ放題の店舗では、ことし4月から、少しずつ取ってもらって食べ残しを減らす取り組みを始めました。

会計時に残さず食べた皿の写真を見せると次回使えるドリンクバーの割引券がもらえる仕組みで、訪れた客は食べ終えた皿の写真を撮影して、参加していました。

家族で来店した53歳の男性客は、「残さないよう気をつけて食べました」と話していました。

食品ロス対策として国が食べ残しを持ち帰るためのガイドラインを作ることについて、すかいらーくホールディングス管理本部の林利明副本部長は、「持ち帰り容器のアイデアが社内で出た時は指針となるものが無かったので安心に持ち帰ってもらうための検討をかなり重ねた。国が示したガイドラインがあれば、安心感があるので、食品ロス削減に取り組みやすくなると期待している」と話していました。

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