田んぼで出会い、すぐに仲良く遊ぶ子どもたち(山口勝則さん提供)

 7月初旬、千葉・匝瑳(そうさ)に広がる里山の田んぼの宵。蛍が宙に舞い、光が瞬き揺れる。求愛のためとされているが、牽制(けんせい)のアピールという説も。恋愛も、結びつくことも単純ではないらしい。  昨年の合計特殊出生率が前年の1・26から1・20に下がり、過去最低を更新した。東京都は1を切り、0・99に。人口減少は予測を大幅に超えて加速している。  既婚者の出生率は2近くを保っている。だが、若者は「娯楽やチャンスや仕事がある」と思わされ、大学も集中する東京に吸い寄せられ、収入が不安で結婚しない人が増えている。本人の努力不足? いや、この国は教育が行き渡り、多くの人は長時間よく働く。それなのに、貧困が広がり、将来設計を描けない。ならば原因は一つ。政治と経済界の失策だ。  都会には消費としての娯楽があふれるが、ただで遊べる山や川、海がない。「ブルシット・ジョブ」(無意味な仕事)があふれ、人が多い分チャンスは減る。東京都の中間層の経済的な余力は、家・食・通勤の費用を除くと月に約13・5万円で、全都道府県で最下位。約24万円の三重県が最も多く、上位は地方が続く。東京との差は月に約10万円。年間だと120万円以上! 都会ほど貧しくなりえる。  「フード・マイレージ」(食料の総輸送量×輸送距離)という概念を広めた中田哲也氏の分析では、出生率の上位と下位の市町村を比較すると、出生率が高いのは、人口が市街地に集中せず、農家や農地の比率が高く、小農家が多く、犯罪が少ない所だという。お金以外の安心感か!  だから、私は言う。「Re Life ローカルへ」。田畑で半自給。地方は人が減る分だけ、地域の役に立つ小さな仕事が多岐に必要。ゆえに、半農半「複業」という生き方が芽生える。複業はリスク分散になる。一つがダメでも他がある。米も野菜もある。ならば不安は減り、人と人の関係性は増え、安心して結婚可能。人口減少時代の方程式だ。国よ、出生率低下を嘆くなら、「ローカルに住みたい」と思わせる施策を! <(高坂勝(こうさかまさる) 脱「経済成長」、環境、幸せの融合をローカルから実践。53歳)>


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