職場や街でふとした瞬間に漂ってくるのが、たばこのにおい。特に気になる「口臭」や「服についたにおい」は、喫煙者の近くにいるだけでも感じることがある。

吸わない人にとっては不快で、吸う人もできれば何とかしたいと考えているはず。また家庭でも夫や妻だけが愛煙家の場合、そのにおいに悩まされるケースもあるだろう。

そんな“たばこ臭”はどうすれば消せるのか。「口臭」と「服のクリーニング」の専門家それぞれに対処法を聞いた。

「3つの有害物質」で口が臭くなる

まずは「口臭」から。喫煙者の口からきついにおいがすることもあるのはなぜか。 口臭治療を専門とする歯科医師・中城基雄さんに聞くと、たばこの「煙」が悪さをするという。

中城歯科医院院長・中城基雄さん
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紙巻たばこの煙には、おしっこのようなにおいがする「アンモニア」、刺激臭がする「ホルムアルデヒド」など数多くの化学物質が含まれている。これだけでも厄介だが、さらに「3つの有害物質」が口内環境に悪影響を与えるというのだ。

(1)タール(ヤニとも呼ばれる。粘着性が高く、化学物質を口内に残りやすくする)
(2)ニコチン(血管を収縮させ、歯茎の調子を悪くする)
(3)一酸化炭素(体内の酸素濃度を低下させ、唾液の分泌を減らす)

「タールは歯や歯茎に付着しますし、ニコチンは歯周病の誘発因子にもなります。たばこを吸って口に良いことはひとつもありません」(以下、中城さん)

ドブのような口臭になることも(画像はイメージ)

たばこの煙が臭いのに、口内環境も悪化して口が臭くなる…。これらの影響で、喫煙すると“ドブ・し尿・魚の臓物のような口臭”になってしまうという。

たばこには、電子的に加熱した蒸気を吸う「加熱式たばこ」や「電子たばこ」もあるが、これらはどうか。中城さんによると、ニコチンやタールが少ない・入っていない製品もあるが香料などは含まれるため、口内環境を悪化させる可能性はあるとのことだった。

喫煙後のケアが大切

たばこによる口臭を消したいならどうすればいいのか。中城さんは「禁煙が一番の対策です」としつつ、吸いたいなら「喫煙後のケア」が大切と話す。

マウスウォッシュなどで口内を洗い流そう(画像はイメージ)

たばこの煙に含まれるタールは粘着性が高いため、喫煙後の口内をそのままにしておくと、たばこの化学物質、食事の食べカス、歯垢がくっついて“においの温床”になりやすい。そこでこまめなうがい、マウスウォッシュや歯磨きで口内を洗い流すのがお勧めだ。

余裕があるなら、コンビニなどで「カットフルーツのパイナップル」を買い、口内を転がすように食べるのもいい。歯や歯茎がタールでねばついたところに食べカスが付着すると、口内の細菌が増えてにおいやすくなるが、加熱していないパイナップルにはタンパク質を分解する酵素が含まれるため、食べると口内の汚れを“掃除”してくれるという。

たばことコーヒーの組み合わせは悪臭を引き起こす(画像はイメージ)

逆に避けたいのは、コーヒーを飲むこと。コーヒーだけでも口臭の原因となるが、たばこ臭と混ざると、においがさらにきつく感じるという。

「人間の嗅覚は“言語化できないにおい”を不快と感じます。たばことコーヒーの組み合わせはにおいが何種類も混ざるので、言いようのない悪臭となるのです」

なお「自分の口臭」がにおうか気になる場合、セルフチェックをしてみるのもいいかもしれない。方法は、喫煙後に自分の唾液を空き容器に入れて一晩おき、翌日に嗅ぐというものだ。

これでにおった場合は、「喫煙後のケア」にさらに力を入れてほしい。

服に“たばこの粒子”がつく

たばこ臭と言えば「服についたにおい」も気になるところだ。喫煙OKの場所に行くと、自分が吸わなくてもにおいが移ってしまうこともある。

クリーニング師の「洗濯ハカセ」こと、神崎健輔さん

クリーニング師の国家資格を持つ神崎健輔さんによると、私たちが服から感じるたばこ臭は、たばこの煙に含まれる化学物質が“霧の10分の1”よりも小さな粒子となったものだという。

「これが衣類の繊維につくのは、“目に見えないくらい小さいたばこ”が数百万個ついていると言っても過言ではないくらいの状態です。大切なのは、においのもととなる粒子を取り除くことです」(以下、神崎さん)

そんな“たばこの粒子”を取り除く方法は、たばこの種類に関係なく「温風を当てる」ことだ。

自宅でたばこ臭を消す方法

神崎さんによると、たばこの粒子は温度が上がると、服の生地から離れやすくなり、15~30cmの距離から、ドライヤーで10分ほど温風を当てるとにおいも飛んでいくという。

ドライヤーでたばこ臭が飛んでいく(画像はイメージ)

さらに、霧吹きで「水分を与えてから」温風を当てるとより効果的。たばこの粒子は、水に溶けると繊維から外れやすくなるからだ。または服にアイロンの蒸気を当てたり、お湯を張った湯船の上に吊り下げたりしても、たばこの粒子が取り除けるという。

これなら自宅でも簡単にできそうだが、注意点もある。たばこ臭がついた状況によっては、においが落ちにくいことがあるのだ。

油とたばこ臭の組み合わせは手ごわい

この状況を判断するポイントは空気が油っぽいかどうか。神崎さんによれば、一般的な居酒屋など、油が飛び散らない場所でついたたばこ臭なら、ドライヤーなどで消すことができる。

油っぽい場所でついたたばこ臭は落ちにくい(画像はイメージ)

一方、焼き肉店など油が飛び散る場所でたばこの煙を浴びると、服には油とたばこの粒子が付着する。油がドライヤーの熱では蒸発しないことから、においもなかなか消えない。

この場合は自宅で洗濯をする、または、クリーニング店に頼むのがお勧めとのことだ。

ちなみに、消臭スプレーを使う人もいると思うが、神崎さんは「やり過ぎには注意してほしい」と話す。においの原因や汚れを閉じ込めてしまい、繰り返していくうちに、たばこの粒子が積み重なっていく。その結果、より強烈なにおいを放ってしまうことがあるという。

外出先なら除菌シートで消臭も

最後は、もし外出先などで「たばこ臭を今すぐ落としたい!」という場面。そんな時は手や身の回りなどの汚れを拭き取る、除菌シートの出番だ。

「除菌シートには水分があるので、たばこの粒子を絡ませて拭き取ることができます。また、除菌シートにアルコール成分が入っていれば、アルコールがたばこの粒子を水に溶けやすくするほか、水分の蒸発を促してもくれます。衣類の粒子を拭き取るイメージでなでるとにおいが消えます」

携帯型の除菌シートを備えておいてもいい(画像はイメージ)

消臭効果はノンアルコールタイプにもあるが、アルコールタイプの方が期待できるという。ただしアルコールは衣類の色を落とすこともあるので、目立たない部分で試してから行うのがいいとのことだ。除菌シートは手指の消毒にも使えるため、普段から持ち歩いてもいいだろう。

たばこ臭は自分だけではなく、周囲にも影響を与える。口臭が心配なら喫煙後のケアを、服のにおいが気になるなら、ドライヤーや除菌シートを活用してみてもいいかもしれない。

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