奨学生らの呼び掛けに応じて寄付する男性(右)=札幌市の札幌駅前で2024年4月20日午後1時6分、片野裕之撮影

 病気や事故で親を失うなどした子供を支援する「あしなが育英会」の、2024年度からの奨学金を申請した北海道内の高校進学者69人のうち、63%にあたる44人が支援を受けられなかった。全国的な申請の急増に育英会の資金が追いつかなくなっており、奨学金を受けた大学生らでつくるあしなが学生募金事務局は20日、全国各地で街頭募金活動を始めた。【片野裕之】

24年度・道内69人希望

 育英会によると、道内の高校生が対象になる奨学金の申請者は、23年度から16人増加して、統計のある過去5年で最多となった。23年度に奨学金を返済不要の給付型のみにして以降、返還に不安のあった人たちからの申請が増えているという。物価高も重なった。

 一方、あしなが奨学金は寄付と街頭募金を原資にしており、新型コロナウイルス禍以降、いずれも減少傾向にあるという。道内では22年度までほとんどなかった不採用が、23年度は41%に急増した。全国でも24年度、過去最多の1800人が申請したが、54%にあたる985人が不採用になった。

 育英会が昨年9~12月に受け付けた、高校進学者を対象とする奨学金の申請データの分析によると、申請者全体の等価可処分所得(可処分所得を世帯人数で調整した所得)の中央値は約126万円。保護者の51・6%が「病気」または「病気がち」と答え、遺児家庭が苦しい生活を強いられている実態も浮かんだ。

通行人に募金への協力を呼び掛ける儀同唯さん=札幌市の札幌駅前で2024年4月20日午後1時11分、片野裕之撮影

 資金を確保しようと、募金事務局などは20日、全国で街頭募金活動を始めた。札幌市のJR札幌駅前では、学生約20人が「寄付が大きな力になる」と呼び掛けた。

 中学1年の時に父を病気で亡くした北星学園大社会福祉学部4年の儀同(ぎどう)唯さん(21)は奨学金で大学進学がかなった。「奨学金を知る前は、進学で家に負担をかけてしまうと思っていた。奨学金のおかげで勉強できる」と感謝している。「助けを求められない学生がいる。遺児の現状を多くの人に知ってほしい」と訴えた。

 21日には札幌、旭川両駅前と丸井今井函館前で、27、28日には両駅前に加えて札幌三越前と小樽駅前でそれぞれ募金への協力を呼び掛ける。いずれも正午から夕方まで。集まった資金の半分は国内遺児の奨学金に、残り半分はアフリカの遺児の教育支援にそれぞれ充てられる。寄付は郵便振替やインターネットでも受け付けている。

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