完成したグリーン豆の品質を確かめる社員=愛知県春日井市の春日井製菓春日井工場で

 さくさくの歯応えと程よい塩気。エンドウマメを丸ごと揚げた春日井製菓(名古屋市西区)のグリーン豆はおやつはもちろん、盛夏のビールのお供にもぴったりの二刀流食品だ。  ピーナツを加工した落ち着いた色合いの豆菓子が多い時代に、新鮮さを求めて同社は緑色のエンドウマメの加工に挑戦。1973年の発売当初は供給が追いつかないほど注文が相次ぎ、別部門の社員が製造や発送を手伝った逸話が伝わる。  材料のマメは、ニュージーランドやカナダから輸入している。製造や出荷は機械でほぼ自動化しているが、社員は各工程の時間や温度をまめに調節する。工場長の梅山敬介さん(56)は「産地や気候によって水分量などの状態は一粒一粒異なる。製品の質を一定に保つために細心の注意を払っている」と話す。  工場では、選別したマメを専用の液に一晩浸す。水分を吸って一粒の直径が1センチほどになったものを揚げて、高温の油で二度揚げして香ばしくかりっとさせる。白い衣のもとを付けたら、粒どうしが付かないように100度超の熱風で焙煎(ばいせん)。塩気を鮮明に感じるように、最後に塩を振る。  栽培や収穫を身をもって知ることが大切だと考えた同社の社員は2022年、愛知県春日井市の畑でエンドウマメを育て始めた。製品には使わないが、畑で汗を流すことで社員は素材への愛情を育んだ。  収穫を手伝った社員の木村真弓さん(38)は「栽培に必要な水が少なくて済むエンドウマメは、持続可能な食材と言われている。栄養も豊富なマメの力を広めたい」。  発売から50周年となった昨年は、味付けも刷新した。担当した木村さんは複数の塩を半年試して、仕上げにフランス・ロレーヌ産の岩塩を加えることにしたという。「マメの甘みがより引き立つ」と受けも良い。1年で800万袋を出荷した。今後も同社の看板商品であり続けるだろう。  文・写真 藤原啓嗣

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 春日井製菓はかつて「春日井のグリーン豆」というテレビCMを放映した。製造工場が愛知県春日井市にあるので同市の会社と思われがちだが、本社は菓子問屋が並ぶ名古屋市西区。社名は創業者の名字、春日井にまつわる。担当者は「名古屋飯としても認知されてほしい」とぽつり。  そんな定番の90グラム入りは200円前後で全国の小売店に並ぶ。塩味以外にわさびや黒こしょう、コンソメ味のグリーン豆を展開=写真。そのまま味わうのもいいが、砕いて揚げ物の衣にと料理の材料にも使われ始めた。


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